夜の山中湖


 家族で一泊旅行中。

 夜の山中湖畔は暗いうえに誰もおらず、もし誰かが襲ってきたら、いかんともしがたい。昔話の中で、山姥や追剥がいるという峠道を、それでも夜に越えようとしてしまう旅人が必ず登場するが、そういう危険があっても、まあなんとかなるんじゃないか、と思ってしまう楽観主義というか無用心さが、誰にもあるのかもしれない。危険に遭遇して初めてシマッタ!と後悔するが、後の祭り。
 さいわい、山中湖畔は道路にも近いし、実際には誰にも襲われなかった。懐中電灯を持った家族連れが「夜の探検」に来て、むしろこちらを怪しんでいた。あとは、カップルがひと組。
 三脚を立ててそれっぽい方向にカメラを向ける。1960年代の19mmは開放で撮ると周辺の像がひどく流れた(レンズのせいか、レンズとCMOSの相性のせいか?)。

 夜、家族の誰よりも早くに寝てしまい。皆が寝るときに起きてトイレへ行き、再び眠ろうとしてもしばらく眠れない。眠れないまま、降りだした雨の音を聞いている。小雨になると、ダースベーダーの呼吸のような、低く唸るような音が、数秒の周期で聞こえる。それを聞いていると、さっき行った山中湖の夜霧の中に、何故か透明なゴジラが現れて、周りの街を睥睨している、そのゴジラの吐息が聞こえている、まあ「妄想」ですね、そういう場面が浮かぶ。そのうちに眠りについた。

 学生時代の友人のK君は、深夜に車で走りながら、夜空を背景にシルエットになった黒い山なみを見ていると、大きなハイジが山なみの向こうから山をまたいでやって来るような気がする、と言っていたな。それを聞いた女の子にすごく受けていたから、覚えている。

 8/9の朝、その音が冷蔵庫からしているのに気がついた。。。