月食


 土曜日、快晴。神奈川県立近代美術館葉山にベン・シャーン展を見に行く。写真展示では1930年代のアメリカの写真。ロバート・フランクから二十年前の、アメリカ人、と捉えるのは間違っているのか?まあ、写真の立ち位置や撮影者の精神なんかを比較すれば、違うのだろうけれど、そういう理屈はともかく写真を眺めていると、さらに二十年前のアメリカ、と感じた。
 笑顔の人が写っている写真が少ない。古い写真なのに、人々の気持ちみたいなことが、いま隣にいる人のようだ。ところが、そこに笑顔が出てくると、それは隣の人から、急に懐かしくも『幸せだった』過去に思えてくる。それと、夕日、というのも曲者だった。笑顔の人々と、夕日が作る斜光線に照らされた街や風景。それが出てくると、それまでの隣人・・・同質の共感?みたいなことがころっと変わって見える。http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2011/benshahn/index.html

 10時少し過ぎたころに入館したが、二時間近く、ゆっくりと作品を鑑賞。そのあと、砂浜に出て昼間のスローシャッター写真を撮り、それから海沿いのバス通りを歩いたり、海沿いの堤防に沿った細い道をたどったりしながら森戸神社。カフェ・マニマニでチキンカレーを食べてから、バスに乗って逗子駅に戻った。

 日が暮れるのが早い。あっというまに一日が終わってしまう感じ。

 夕食後、眠ってしまうが、十一時にトイレに起きたら、妻が月食だと教えてくれる。ああ、そうだった、忘れていた。カメラと三脚を持って外に出て、住宅街の比較的暗そうなどこかの家の影に入り、適当に空にレンズを向けて写真を撮る。露出を変えて、さくさくとどんどん撮る。この写真は、月が適正に写った駒と、星や雲が見える駒(月は真っ白に飛んでいる)を合成しています。右上ぎりぎりにすばるが見える。

 中学生のころだったろうか、皆既月食の皆既を挟む前後二十分か三十分か、長時間露光して月を撮ったことがあった。すると、太線で写った月の軌跡の中に斜め線で区切られて陰った部分と明るい部分が写っていて、そのときは、おー!面白いじゃん、と思った。そんなことを思い出した。ユニクロで買った「裏フリース暖かパンツ」でも、外にずっといると寒くなってきたので、家に戻る。そこらの外に出て、腕組んだりしながら、真上の空を眺めていたのは、私のほかに若い男一名とおっさん一名だった。


 このバス停留所、今日はかすんでいてよく見えないけれど、窓のちょうど向こうに富士山が見えるのです。