イリノイ


 イリノイ州っていうのがアメリカ合衆国の中のどのあたりにあるのか知らない。だけど私のiPODにはスフィアン・スティーヴンスのイリノイってアルバムが入っている。8日の日曜日、下北沢のイーハトーボって喫茶店ニセアカシアのM本さんと、私の写真ともだちのM川くんと私で、M川くんの写真を見ながらそれをzineに仕立てようとか、あるいは、とりとめもないような話をして、そのうちにニセアカシア1号に掲載された同人各位の「好きな音楽」にこたえているページに、M本さんがスフィアン・スティーヴンスを挙げているのをM川くんが見付けて、M川くんが「ぼくも好きです!」と言って、私も一枚だけだけど持っているよ、ほらiPODに入っているでしょ、ってくるくるとリングを撫ぜてアーティスト名を見せたりした。集まった三人が、しかも二十代と三十代と五十代という三人が、みんなスフィアン・スティーヴンスを知っていて、聞いていたというのは結構稀有な確率ではないだろうか。特にM本さんが深く激しく?スフィアン・スティーヴンスのファンだ。私のiPODに入っているアルバムはイリノイってアルバム。
 だから、夜、下北沢から帰るときには最初はアストン・ピアソラを聞いていたが、それが終わったので、イリノイを聞いてきた。夜風は半袖から出た腕にちょっと寒かった。今日はM川くんが好きな写真集として高橋恭司のLife Goes Onという写真集を持ってきた。その写真集を私も気に入って持っていたのでこれも驚いた。私は二年か三年か前に、夏の京都の下鴨神社古本祭りで買ったのだった。買った本を持ったまま「いるか喫茶」って名前だっけ、羊博士じゃないし、なにか村上春樹の小説に出てくる名前のようなカフェに行って、その写真集を家族のTやともだちのNさんに見せたような気もするが、見せてないかもしれない。いるか喫茶ではノートパソコンにたくさんの曲が録音してあって、客が自由に選曲できる。選ぶとその曲が結構な音量で流れる。そのときにレッド・ツェッペリンの曲をかけたのだが、ものすごく場違いだった。Nさんは音楽に相当詳しいのに、そのときにはそのことを知らなかった。きっとNさんは私のその選曲が場違いやなーって思ったのだろう。
 下北沢の町では下北沢音楽祭というのをやっていて町を歩いているとあちこちで生演奏が聞こえてきた。下の赤いトロンボーンのバンドとかです。たぶん二階の会場まで上がってくる人が少ないので道に向かって吹いているのだろう。
 7/6は母の誕生日で母は80才になった。7/7、昨日の土曜日はむすめの誕生日だった。平塚の七夕祭をちょっとだけぶらついてきた。(写真も撮ったけど道いっぱいに歩いている観光客ばかり撮ったので肖像権関連でここには載せられない)娘が七月七日に生まれたので奈々とか菜々とかナナとかいう名前も考えたがやめた。なんでやめたのかはわからないけど、まあ、そんなのはやめた方がいいよね。
 また今日の話に戻るけれど、下北沢の古書+一部新刊書の古書びびびにて、ずっと買おうかどうか迷っていた上林暁の短編を山本善行が編集した「星を撒いた街」をとうとう購入。古書ほん吉にも行った。梅崎春生の本がたくさんあってちょっと心ひかれたけど買わなかった。年配の男性のお客さんが入ってきて「昭和十年くらいの東京の地図を探している」と店員の女性に話しかけている。彼女は「うーん、どうでしょうねえ・・・」とか言いながらもあちこち探している。故あって彼女とは知り合いなのでそんな特注に応えようとしている様子が気になってしまう。
 さいきん、レンタルビデオ旧作が一週間百円になったことと、ずっと邦画ばかりを見てきたけれどそういうつまらない縛りはやめようと思い立ったこともあって、このまえTSUTAYAの洋画のコーナーなどに足を踏み入れた!洋画についてはまったく疎くて、有名俳優さんのこともまったく知らない、名前もほとんど知らないしわずかに知っている俳優さんも顔と名前が一致するのは数人だろう。亡くなった方を除くと。だから手当り次第みたいにして適当にどんどん選んで行けそうだった。先週は三本みて、また三本借りてある。昨日までに「列車に乗った男」「ミステリー・オブ・サンバ」「レイン」「夜になるまえに」っていう映画を見た。どれもこれも面白かったので手当り次第みたいに選んだけど結構するどい選択眼なのではないの!って勝手に悦に入ったりした。
「ミステリー・オブ・サンバ」は、ちょっとブエナ・ビスタ風に、五十年くらいまえに歌われていたサンバの曲が忘れられるまえにまだ存命のミュージシャンを訪ねてそれを収集し、当時のことをインタビュー形式でさぐり、演奏もするというもので映像もきれいだが、なによりその「失われそうになっていた」サンバの曲の美しいことったらない。いつごろの映画かな2009年とか2010年かな。たとえば高校時代の友人のK田くんにおすすめしたいです。
 先週は小川洋子偏愛短編箱を読んだ。そのあとに勝ったまま放ってあったガルシアマルケスの「族長の秋」を読み始めているけど、一方で吉田篤弘の「圏外へ」も読んでいて、そういえば上林暁の「半ドンの記憶」って短編集も三つほど読んで止まっているな。そこへまた未読本が増えてしまっている。のんびりと読書をする時間にいつもあこがれているがなかなかうまくそういう時間が出来ない。


上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

Illinoise

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Life goes on

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