南林間あたりの散歩


 余白やさんと二人で、小田急南林間駅から鶴間方面へ、途中泉の森公園を通り抜け、米軍厚木飛行場のフェンスに沿って進み、こんどは大和駅まで、ずっと歩いて回った。大和駅からふたたび小田急線に乗り、さっき歩いた鶴間とか南林間を通り越して中央林間駅まで行き、駅から相模カントリークラブのある方へ。まだ残っている旧米軍住宅の建物を見てきた。中央林間駅近くでUTOROという喫茶店(店ができて39年だと書いてあった)を見つけて入り、珈琲を飲んでから帰って来た。
 数年前に余白やさんが、厚木や座間の米軍施設に勤める米兵や将校向けに1960年代に基地周辺の街のあちらこちらに建てられた「米軍ハウス」というのがほとんど消滅したもののまだいくつかは残っているという話を聞いたことがあったそうで、それだけを頼りに、南林間から鶴間あたりを歩いてみたのだった。しかしずーっと歩き続けたが、鶴間あたりで米軍ハウスらしき建物を発見することはできなかった。最後に行った中央林間のハウスは、すでにそこにその建物があることは判っていた場所。(その建物を撮ったフイルムはまだ撮り終えずにカメラの中なので、ここには散歩の途中に通過した泉の森公園と、たまたま行き当って「なんか安部公房の世界みたいですね」などとしゃべっていた鶴間タウンハウス(公団の高齢者同居者向け賃貸物件だそうです。1981年竣工)の写真を載せておきます)
 以上の行動パターンは釣りに行ったがなにも釣れず、魚屋で魚を買って帰ったみたいな感じだろうか。
 しかしどこの街でも初めての街を歩くのは米軍ハウスがあろうがなかろうが、面白いものでした。
 高田渡の歌に♪日曜日には あの小川まで のんびりと魚釣りにでも 朝早くから夕暮れまで 糸を下げて一日過ごします♪という歌詞の歌があるが、この日曜日の釣り人は魚が釣れても釣れなくてもどうでもいいところがたぶんあって、すなわち魚釣りを口実にのんびりと川面を見ながら、いろんなことをぼんやりと考える(というか、いろんなことをぼんやりの中に畳み込んで消してしまう)ために川に来ているのだと思う。
 米軍ハウスが魚で、川がどこぞの街。