写真の秘密


 半年かもっと前に買ったまま読んでいなかったロジェ・グルニエ著「写真の秘密」を読了。写真に関するエッセイを集めてある本だが、本の中盤あたりの、第二次世界大戦中のパリを舞台として、グルニエとその友人たちが潜り抜けてきた日々の記録は、もちろん戦争という特殊な(?)時間を潜り抜けていくという、こんな単語を使うのもちょっと違うとは思うが「波乱万丈」な物語で、だけど、そういう時代の特殊性と平行に、(特殊ではないのに)魅力的な若い時代らしい初々しさや破天荒な行動やそういうものを包んでいる「幸運」が見え隠れしていて、手に汗握るの冒険劇のようでもあるのだった。

『ともあれ、平凡この上ないものも含めて、いかなる写真も、過去のある瞬間を定着している。そうした写真を見たときに、われわれの想像力が、われわれの妄想がどこまで運ばれていくのかは、わかるはずもない。』(「ひとつの源泉」より抜粋)

 知人のブログにデビット・クロスビーのことが書いてあった。私が最初に聞きに行った洋楽のコンサートが、1975年のデビット・クロスビー&グラハム・ナッシュのコンサートだったことを思い出した。このコンサートの具体的な記憶はほとんどなくなっていて、どういう感想を持ったのかもわからないが、それほど好きだったわけでも聞きこんでいたわけでもなく、ただ、音楽雑誌の紹介記事かなにかで興味を持って聞きに行ったということだったのだと思うから、熱狂的な興奮みたいなことは覚えなかっただろう。捕鯨反対のようなメッセージが込められた曲が幻想的だったこと、もしかしたらそのメッセージにちょっと鼻白んだ感がただよったこと、熱狂的な女性ファンが花束を持って、客席の後ろから猛スピードでステージに駆けつけたこと、そういうのを何か茫然と眺めていた私がいたように思う。
 このときの最新アルバムに関する書き込みコメントをアマゾンなどで読むと、ずいぶん高評価している人もいる。レコードを持っていたが、それほど好きなアルバムでもなく、いつの日かもうアナログ盤は聞かないだろうと意を決したときに捨ててしまった。だけど、なにかを思い出すかもしれないと思うと、また聞いてみたくなったりするのだ。

写真の秘密

写真の秘密


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このアルバムのツアーだったように思います。