大晦日を歩く


  大晦日、Tの部屋を10時過ぎに出て、歩き始める。近くの、かもめ食堂のような新しいカフェが万が一開いていたら、モーニングを食べようと思ったが、案の定もう年末の休みに入っている。そこでミスタードーナツに入り海老グラタンバーガーとコーヒーで朝食とする。それから、鴨川の西岸をずんずんと歩く。流れは穏やかで、水は澄んでいる。流れの影が川底に映っている。水深や風による波の様子によるのだろう、波の影は金色の線画になり、それは目の細かい亀甲模様にみえたり、蛇の辿った跡のように見えたり。子供たちは、川の中を覗きこんだり、川面に顔を出す飛び石を跳ねたり、その場で拾った細く長い枝で葦や萱のような枯れた藪を叩いたり掻き分けたりしている。冬の流れのなかに、何か魚がいるのだろうか、どきどき歓声が上がる。

鴨川から離れて、下鴨神社に行く。境内は初詣に向けて準備が進んでいる。新しい年の干支の馬の絵が既に飾られている。糺の森は、すがすがしい。気が付かなかったが夜の間に雨が降ったのだろうか。参道のところどころに小さな水溜まりがあり、空気が気持ち良く感じるのは、適度な湿度があるからか。
そのあと、また、鴨川に戻り、鴨川デルタ近くのベンチに座り、目の前のウッドデッキ(こんなの前からあっただろうか)で遊ぶ親子連れを眺める。父親のオレンジ色のダウンジャケット、二人の子供の緑と赤のダウンジャケット、その三つの綺麗な色が作る、刻々変わる光景をどきどき写真に撮る。

T等と待ち合わせて、大晦日にもかかわらず営業していた丸太町×寺町下るにあるグランドバーガーという店で昼食。チーズ二種類と、ベーコンと、アボカドが、基本のハンバーガーにトッピングされている、グランドバーガーを食べた。

そのあと、恵文社一乗寺店に立ち寄ってから、一端、Tの部屋に戻る。恵文社では小島信夫の新しい短編集を見付ける。昨日、三冊の本を買ってしまったばかりなのに、また本を買ってしまった。こんなのは、旅先でなく、日常になかにいるときにはもっと自制が効くのだろうな。

テレビで東京オリンピック女子バレーの秘話といった内容のテレビを見てから昼寝。8時半くらいに家を出る。高野のバス停留場からバスに乗り祇園へ。八坂神社は、まだ余裕を持って歩ける。既に白朮詣は始まっている。境内のあちらこちらで白朮火を持ち帰る為の縄を売っている。縄にもらった火を家に持ち帰り、正月料理の種火にするという伝統行事とのこと。では、そうするとどういうご利益があるのかな。家内安全なのかな。その縄をくるくる回して歩いている人がたくさん。
うどんとそばの「おかる」へ入り 晦日蕎麦を食べる。今日は並んでなかった。

ずっと歩いて、途中、喫茶店でコーヒー飲んで時間を調整し、年の変わる10分くらい前に下鴨神社に行く。列に並ぶ。参道の両側に屋台が並ぶ。更にところどころに焚き火があり、火の粉が上がっている。やがて列に並んだ若い人が、カウントダウンを始めた。