BOOKS&PRINTS


 今日は三連休の三日目にあたる月曜日。明日の火曜日に休暇を取得して、今日から一泊二日で家族のMと二人で浜名湖あたりに小旅行に行く。
 久々に電車ではなく、自家用車で行くことにする。新東名高速を走るのははじめて(途中東名ではなくわざわざ新東名にして新しいSAに寄って行くことにした)。さらにずーっと高速とは縁なしなので、ETCカードを持っていない。そうは言っても今後、急に自家用車で遠出をする機会が増えるわけでもなかろうし、ETCのない分の割高な高速代は我慢するしかないですね。
 うちの赤いマツダのトリビュートは昨日車検から上がってきたばかり。いったい何年乗っているのか?車検の年だったというのに把握していない。7年か8年か9年か10年か?だいいち、何年目に車検が来るのかもよく判っていない。トリビュートという車は、その前に乗っていたステップワゴンから買い替えるときに、次はどうしようか?と思い始め、道行く車をきょろきょろと見回していて、目立たずかっこ悪くないSUVとして目に留まった。それでマツダの店に行って相談してずいぶんと安く(というふうに車やさんは誰にでも思わせるのが得意なだけ?)買えた。日本では不人気車種で滅多に見かけなかったが、台湾とかに出張に行くと、やたらと沢山走っていて驚いたことがあった。いまはその数世代あとの後継にあたるのがカーオブザイヤーのCX5になるのかな。
 久々に高速道路に乗ると最初は運転がぎくしゃくする感じで肩に力が入ってしまう。そのうちに慣れてきて、意外に自動車旅行も楽ちんだなあ、などとふと思ったりもする。
 浜松では写真家の若木信吾が企画運営しているレトロビルの写真集を中心とした書店「BOOKS&PRINTS」に行く。いちど行ってみたかった店で、行ってみたら意外と小さくてなんてことはなかった・・・ってなるのがよくある落ちなのだが、いやいや、この店はいろんな雑誌の記事や写真で想像していたよりずっと広くて、レトロビルの細部や佇まいもよかった。いやなに、たまたま梅雨明け一日目のぎらぎらの新しい季節の太陽光線がそこここに入り込んで来ていて、それがそういう印象をもたらしてくれたのかもしれない。
 RobertFrankの「HOUSEHOLD INVENTRY RECORD」という新しい写真集を買う。
 昨秋だったのかこの冬だったのか、それともこの早春だったのか、ひどいものでいつだったのかの目安すらうまく思い出せないなあ、渋谷の小さな映画館でシュタイデル社の写真集作成のドキュメント映画を見たのだったが、その映画の中でも作成過程がちょっと出てきていた写真集。端正なつくり。黒いハードカバーに金押しの明朝体風でタイトルが入る。その判型は縦にすっと長く特徴的。めくるとえんじ色の紙が現れ、次のページが白ページに黒でタイトル。さらにめくるといよいよ写真がはじまる。ここに「はじまる」と書いたが、写真集にしても写真展にしても一枚一枚は「静止画」と言われるとおりの「静止」した像だが、めくったり移動しながら眺めていく行為は「動画」的である、などという当たり前のことを思い出させる写真集だと感じる。私の手のしわ、というようなタイトルのフランクの写真集同様に、たぶん写真家本人とその周りの人しか知りえないプライベートなエピソードやそのときどきの心の動きがそこに並べてある写真の背景にさまざまに混在したカオスのような色合いを持って存在している。そういうエピソードがあることが判っていて、その詳細の一つ一つを知ることが出来ない。他人だし。その知りえない他人のプライベートな具体的エピソードの羅列が、知りえないゆえに、鑑賞者たる自分自身の極私的なエピソードを、ひっぱりだしてくれて、その自分の極私的なエピソード(=記憶)が具体性を持っては知りえない写真家に過ぎた時間や出来事やそれらの記憶と相乗的ななんらかの反応をする。それでこの写真集が愛しくなっていく。そういう感じがする。縦に長いページの主に上の方に写真が置かれるがページによっては複数の写真がちりばめられる。そういうページは古い古いアルバムのようにも見える。
 主題やテーマなんかない、あるとすれば「人生」のようなことかもしれない写真集を、高齢になったフランクがまたこうして発刊することが素晴らしい。1924年11月生まれ89歳だそうです。

Household Inventory Record

Household Inventory Record


 上の写真はかぎやビルの階段。古いガラス窓を通過した光って、ガラス窓の表面の(最近のガラス窓にはない)凹凸によって、こんな風に縞模様を描くんですね。きれい。

 書店のあとに一階の「さくらんぼ」というこれまたすごく古い(昭和36年からとか?)喫茶店に立ち寄ってサイホンで淹れたコーヒーを飲んだ。店主の女性のかた(おばあちゃん)の話が楽しい。