夜の喫茶店


 昨晩。6日月曜の夜のこと。
 家族の女性陣と外食をしたあとに、ひとり、車で帰宅をせずに、カメラを持って夜の街を2kmほどだろうかレストランから自宅まで歩いて帰る。雲が多いものの(ほぼ)満月がときどき姿を現す、そんな台風一過の夜だった。茅ヶ崎の国道一号線沿い、どちらかというと平塚寄りのところに森ノ珈琲という喫茶店がこの9月にオープンした。駐車場完備の比較的大きな店でガラス張りの店である。自宅まで歩いて帰る途中にこの店に寄って、有機栽培コーヒーというのを注文し、それを飲みながら、読んでいる短編小説の最後の一篇、表題作の「無伴奏ソナタ」を読んだ。その小説を読み始め、読み終わるまで、森ノ珈琲にいて、読み終えてから店を出た。小説では、それはいまよりも未来の都市での出来事なのか、架空の街でのことなのか、音楽家が規則を破ったために音楽を取り上げられていく。それでも音楽が生まれていくことは規則や罰則により制御できず、新しい音楽が市井の人々の中に落とされ根付いて行くのだった。
 その小説を読み終えてから、また国道一号線沿いを歩いた。もうシャッターを閉じている古い八百屋の建物を撮った。橋の欄干にカメラを置いて、バルブに設定してシャッターボタンを押し、頭のなかで20秒を数えてからシャッターボタンから指を離した。それがうえの写真です。
 最後の一コマは空に向けて、満月を背景に雲が動いて行く様子をファインダー越しに見ながら、手持ちのバルブで長時間の露光をした。雲が動いているのに月が動いている。月が雲間から顔を出したところでシャッターを閉じた。