ショウ・ミー・ザ・ウェイ


 散歩していてこの写真を撮ったときに、自分の影が入っちゃうけどそれでもいいや、と思ったのは覚えている。けれど、この影の「頭部」はなんでこんなに「太陽の塔」のように丸くて大きいのだろう?なにの影が重なっただろう。それともこのとき私の頭はこんなに大きく丸かったのか。

ほぼ同期の同僚と晩飯がてらに海鮮居酒屋に行った。同年輩の上に、彼は洋楽を熱心に聴いてきた男なので、話のネタになるかなと思い、2007年頃の雑誌PENで、ロックをアルバムジャケットの視点を一番表層に置いて、時代や中身の音楽からあれやこれやと考察するような特集をした号を居酒屋に持っていった。
ところで最近は雑誌で写真や音楽を特集してくれる頻度が激減した感じがありますね。世の中の全体の流行からずれてきたのかな。
それはさておき、その雑誌で考察されたテキストなんかは読まないわけで、ページをめくっては視界に飛び込んでくる、特にわれわれの場合は60年代や70年代や80年代のジャケットを見て、まぁ、基本は懐かしくなる。これ聴いた、とか、あれも聴いたとか、そのそれぞれを「聴いた」ときの個人に纏わる出来事なんかも思い出しながら。
その当時の、PENの編集部が選んだこの特集にふさわしい、サブカルチャーのカリスマ含めて色んな人が、ジャケットを切り口に一枚の個人的イチオシを短いコメント付きで挙げている、そういうページはありがちで、その通りにやっぱりあって、7年か8年の間にここで取り上げた人の何人か、いやむしろ多くの方は大御所にならずに、カリスマにもならずに、そんな人もいたね、と忘れ去られたり去られる寸前だったりもするのだろうな。
このコーナーまで来ると、即ち特集ページ範囲内ではあっても、その中では後ろの方の記事で、その分、アルバムジャケットのプライオリティはルーズになって、ただ好きなアルバムを挙げているだけって感じもある。でも中身の音楽とアルバムジャケットは表裏一体だから、いくらジャケットデザインかこの特集ては表ですよ、と言われても、どうしても中身が好きであっての上のことにはなっちゃうのだろう。
ストーンズの山羊の頭のスープを挙げている人が随分たくさんいた。私の好きなザ・バンドでは一枚目のミュージック・フロム・ビッグ・ピンクが多かった。
ページをめくっていると1973年前後かな、よく聴いていたピーター・フランプトンのライブ盤が出てきた。FMラジオからエアーチェックしたカセットテープで、よくこのアイドル歌手のノー天気な(?)歌を流していた。きっと流行が去ってピーター・フランプトンもテレビの「あの人はいま」のような番組で、何かの会社の経理をやっている、とかなんとかで出て来るんじゃないのお?と勝手に決めつけてそう思った。でも、話の途切れ目になんとなくWikiて調べてみたら、ピーター・フランプトンはロックギタリストとしてのLEGENDになっていて、数年前にはグラミー賞も受章している。わっ、すげえ。勝手な思い込みは禁物です。
Youtubeで検索すると当時の長髪でかわいらしいアイドルのフランプトンと、いま、初老のスキンヘッドのフランプトンが、当時のヒット曲、ショウ・ミー・ザ・ウェイを歌っているのを見ることができる。
若いフランプトンがこのラブソングを歌うときは、切実に誰かに当てて歌ったのかもしれない。歌手にとってもリアルな歌詞。いまのフランプトンは、まぁ、極めて高い確率で、そうではなくて、多かれ少なかれ懐かしさが含まれるのだろう。