強風の日


 永年勤続者に決められた年数ごとに会社が与えてくれる休暇権利を使って、今週は休みを取っている。まだ先週の腸炎から復活しきれない。いくら消化が正常に戻っても、内臓のいくつかがダメージを食らっていて通常の機能を発揮できていないような感じだ。「台風一過にたくさんのゴミが打ち上げられて、ひどい有様になっている砂浜」のような私の内臓・・・そういう感じだ。
 今日は強風の日。
 小豆島にあるサウダージ・ブックスから出版されている西川勝著『「一人」のうらに 尾崎放哉の島へ』を読んでいる。今日は昼前に茅ヶ崎駅のスタバに行って読んでいた。昼時になりだんだん混んでくる。この店は二人席が多いのだが、いつ行ってもその二人席のほとんどは一人の客が使っている。そして会社員がノートPCでなにかエクセルの表みたいなのを作っていたり、高校生が参考書をめくりながら一心不乱に勉強をしていたり、読書好きらしいおばさんが夢中になって本を読んでいる。私もそこに加わっているのだが、席が空くのを待っている人が出てくると、申し訳ないような気持ちが生じてくる。そこで一時間経ったところで席を立った。
 本はまだ三分の一くらいしか読み終わっていない。出来れば今日中に読み終わりたいのだ。明日から、尾崎放哉が最晩年に住んで、そこで生涯を閉じた小豆島に行ってみようと思っている。その事前のお勉強である。
 続きを電車の中で読もうかな。最初は電車で読書しつつ横浜の関内あたりまで行き、山下公園日本大通りの銀杏でもながめて、また電車の中で読書しながら帰ってこようか、という案を作る。上り電車に乗る。強風でたくさん白波が立っている海を眺めてくるのもいいのではないか?と思い、横浜案を廃案にして七里ヶ浜まで行って、そして帰ってくる。強風の平日。いつもは大勢の人がいる七里の海にはほとんど人影がなかった。
 自宅まで帰って来たが、まだ本を読み終わらない。撮ってきた写真をフイルムスキャナーで読み取る途中で読み進む。ちょうど強風のことが書かれている。冬の小豆島は強風が吹くと書いてある。いま天気は冬型で、上空には寒気が入っているらしい。旅行先の天気予報も曇りと雨マークばかりだし、その上、寒くて強風なのか。

 七里ヶ浜から稲村ケ崎まで歩く。海が見えるカフェTARO'Sが空いていたら、立ち寄ろうかなとも思っていたのだが、やっていなかった。店のカウンターに洋酒の壜が並んでいるのが見える。ガラス窓に青い空と輝く波頭が映っている。振り向けばその空と波頭があるのに、窓に映る空と波がなんとなく素敵に見えるのはどこか病んでいるのではないか。などと思う。