スタンダード 恋人よ我に帰れ


 写真は1/18大磯にて。

 水曜だったかな、木曜日だったかな、出勤前に某駅のタリーズで珈琲を飲んでいたら、トランペットとサックスの入ったジャズのクインテット(もしかしたらサックスは二本でセクステットだったかもしれない)による「恋人よ我に帰れ」(Lover Come Back To Me)が流れているのに気が付いた。ジャズのスタンダードのテーマメロディを、ここで何曲か口ずさんでみなさい、と仮に言われると、たいした曲数は出てこない。「恋人よ我に帰れ」は数少ないテーマメロディを覚えている曲だ。そういえば、似ている曲名の「帰ってくれたら嬉しいわ」ってのも覚えている。言われてメロディが出てこないけれど、そこにメロディが流れていれば曲名を思い出す曲はもうちょっとあるかもしれない。さらに、A)曲名は判らないがでもそのテーマメロディを知っている、という曲はもっとたくさんある。その反対に、B)曲名は知っているのに、テーマメロディは判らないのもたくさんある。AとBが結び付けられればいいのだが、そこが結びついて覚えられない。アルバムを聴いているときには、結びつくわけだ。たとえば、三曲目は「いま何時か知らないわい」という曲だとジャケットに印刷されている。その曲名は何度か違うアルバムジャケットでも見かけたからそういう曲名のスタンダードがあることは知っている。知っているということは聞いたこともあるわけだが、メロディは出てこない。そこで三曲目を聞いてみる。すると、あーこの曲(メロディ)が「いま何時か知らないわい」だったのかあ、などと思う。でもまたじきにその結びついた認識がほどけてしまうわけだ。でも「恋人よ我に帰れ」はほどけていない。若くて記憶力がちゃんとあったときに、覚えたってことだろう。
 タリーズで流れている「恋人よ我に帰れ」のトランペットは勢いがある。十六分音符(でいいのかはよくわからないが)で連続的に音が上下に動いて行く素早いインプロビゼーションが続いて行く。誰の演奏なのか?
 家族のTが読み終わって、最後になってすとんと物語が落ち着くところにまとまった、という感想を聞いたので、学生の頃に読んで以来その中身なんかなにも覚えていないサリンジャーの「フラニーとズーイ村上春樹訳を読んでいたのを中断して、アマゾンで「恋人よ我に帰れ」「ジャズ」「トランペット」と入れてみたら、ドナルド・バードのアルバムが出てきた。タリーズで流れていたのがドナルド・バードのアルバムなのかどうか判らない。それでもその「OFF TO THE RACES」というアルバムのコメント欄を読んでいると評判が良いので聞きたくなった。そこでポチっとしてしまった。
 アマゾンのアルバムコメント欄などに書かれていることは大抵の場合高評価だ。そのアルバムを買った時点で何らかの後押しがあった方や、もっと言えばジャズ好きの方とかドナルド・バードのファンの方とかが買って、そこに感想を書くのが圧倒的に多いから、そういうものだ。

 さて、この文章は23日のブログに書いているが実際に書いているのは25日で、すでにそのアマゾンで買ったアルバムが届いて、昨晩聴いてみた。それはなかなかにエネルギッシュで素晴らしい演奏だった。ところで情けない限りなのは、届いたアルバムを再生して聴いた「恋人よ我に帰れ」がタリーズで流れていたその演奏だったのか違う演奏だったのかが、すでにタリーズで流れていた演奏を忘れてしまっていて、不明だということなのだ。

Off to the Races

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