土の旅


 箱根にある彫刻の森美術館にあるギャラリーで開催中の淺井裕介展「絵の種 土の旅」を見に行ってきた。彫刻の森に行くのは、もしかしたら四十年振りくらいだ。この展示のあとは屋外に点在する彫刻を見ながら散歩をし、ピカソ館にも立ち寄った。淺井裕介展のことは数週間前に日曜美術館の後半に放送されるアートシーンで紹介されて知った。展示を行うその土地の土を含むさまざまな土地の土を使って泥絵という手法で展示場所の床や壁に直接絵を描くと言う。よって展示期間が終わると絵は消される。世界各地の土をガラスの小瓶に集めてずらりと並べるような展示は何回か見た。誰の作品でどこの展示で見たのかもよく覚えていないが一回ではなく何回かそういうのを見た気がする。あれは同じ作家のものだったのか、違う作家のものもあるのか。いずれにせよ、その土に絵具の役割を与えて絵を描くと言うところへ踏み出して作品を描く人がいることに興味が沸いた。展覧会の図録(小さな小冊子)に書かれた学芸員の黒河内さんと言う方の文章にはこうある。『制作地で採取した土を水で溶いて壁に描く手法は、洞窟壁画を思わせる。絵の中には、擬人化された動物や植物、生物、自然の力などが登場する。隙間も幾何学的な図形で満たされ、空白はない。』
 http://www.hakone-oam.or.jp/specials/2015/yusukeasai/

 写真は数日前に宇都宮線の車窓から見た風景。鉄道写真を撮る人にとっての定番スポットが何か所かあって、そこを通過すると必ず複数の撮り鉄趣味の方が三脚を立てて二人か三人か多いときには十人くらいか集まっている。
 今日になってこの写真を選んでこうしてアップしているのは上記の淺井さんの展示を見て、ここに写ったこげ茶色の土に自分の何かが反応したのかもしれない。

 淺井さん自身が土についてインタビューに答えている。展示のタイトルの「土の旅」の部分について。
『土が絵になったり、陶器になって立体になったり、それぞれちょっとずつ形を変えて、おそらくそれはまたどこかに行く、まだ終わらないよ、続いているよ、ということです』
 なんだか最近は「土」である。写真新世紀の優秀賞を受賞していた三田さんという方の作品には「土を採取した場所の山肌に似た表面を持つ陶器」というのが出てきたし、古橋さんの写真展のタイトルは「土の終わり」だったし、この浅井裕介展では「土の旅」のタイトルのもと泥絵を見た。
 むかし泥団子作りが流行ったことがあったことを思い出した。小学校の四年とか五年のころだったろうか。ああいうのすごく緻密に完成度高く作るやつがいたものだった。私はそこそこで満足していたけれど。
 全然読み進まないけれど、何故だか読み始めるとすぐに眠くなってしまうから、投げ出さずに読んでいる「さまよえる湖」、神保町の古書店の外に置かれた均一本コーナーから拾い出して百円で買ったのだ、この本の中で砂漠や泥濘に、すなわち土に、調査隊はいつも苦労を強いられている。

さまよえる湖 (角川文庫)

さまよえる湖 (角川文庫)