由比ヶ浜


♪朝の空を見上げて、今日と言う一日が、笑顔でいられるように、そっとお願いした♪と歌われるNHK朝ドラの主題歌をよく耳にしているうちに、いつのまにかメロディーを頭のなかで繰り返していたことがあった。そのときに、この歌詞の「一日が(いちにちが)」の最初の「ち」と次の「ち」の音程が同じなのか、あとの「ち」の方が半音低いのか、どっちなのかがふと気になった。そこで、それ以来、二度か三度か、たまたま、自宅の居間にある私にはチャンネルの選択権がほとんど割り当てられていないテレビにこの歌が歌われる場面が映ったときに聞き耳を立てるように、音階を正しく聞き取ろうとしたわけだが、センターのさやねぇさんは流れるように歌っていき、二番目の「ち」を取り出して音階を解らしめるようには歌ってくれない。と言うより私の耳がダメなのか、いや、耳と言うより耳から脳に伝わりそれを周波数分解して音程に置き換えて判別するシステムのどこかが鈍化して、分解能が低下したのか。同じような上がったり下がったりが八分音符で繋がるのが、ここに挙げた
歌詞の後半の「お願いした」の「が」と「し」にも当てはまる。しかしここを鼻唄的にふんふんとなぞって確認すると、「し」を「が」より下げようとしても半音したには適当に聞こえる音がなくって、全音下にすると最後の「た」と同じ音程になるが、この「た」と同じ音程はその小説のコードに反するらしく収まりが悪くなる。コードに収まる「が」より次に低い音は「い」の高さで、それは「た」より低いから、そんなことは有り得ない。なのでこの「お願いした」の「が」と「し」は同じ音程に違いない。歌詞の後半の「お願いした」の「が」と「し」が同じ高さなのだとしたら、前半の「いちにちが」の先の「ち」と後の「ち」も同じ方が筋が通ってる気がするが、メロディーの流れ方は、あとの「ち」を半音下げた方が自然な感じもする。

天気予報を頼りに一喜一憂するのは、なんか精神を病んでいて異様に天候に敏感になりあたふた焦っている感じがするものの、25日の金曜日の予報によれば日曜の天気は雨混じりの曇りだったから、土曜日のうちに写真を撮って歩き回らなければならないと言う強迫観念的な思いに突き動かされて、朝から湘南平に行き、午後には横浜にも行った。27日の日曜の朝、六時台に目が覚めてカーテンを開けたら晴れている。慌てて、ってここで慌てるのが尋常じゃないわけだが、慌ててYahoo天気にスマホからアクセスして確認すると、午前中は晴れるみたいだ。昨日の土曜に随分と写真を撮ったから、晴れてようが雨だろうが少しは落ち着いて、部屋の片付けでもすれば良いものを、曇る前に出掛けなければならないと思ってしまう。
そこで鎌倉の由比ヶ浜まで、借りている、銀塩換算600mmまで伸びるコンパクトデジカメを持って、7時半頃には家を出た。家の前のバス停にバスがやって来るのが見えたので全力疾走で走り、数秒間は私のために発車を待っていてくれたバスに飛び乗り、息もたえだえに、茅ヶ崎駅まで空いた道なら10分だ。ちょうど東海道線も待たずに乗れて大船まで15分若。数分の乗り換え時間を経て入ってきた横須賀線久里浜行きだったかなで鎌倉まで。うまく行くとこうして家から45分も掛からずに鎌倉駅に着くのだった。空は一面の青空。なんてこった!
まず、カフェ・ロンディーノで、今日のところはポテトサラダトーストにして、いつもの珈琲。頼んだものが出てくるまで文庫本を読む、その手と本に窓越しに日の光が届く。店に入るときには雲一つない青空だったので、この日の光もいつまでも届いている・・・のだと思っていたら、途中からにわかに弱くなり、とうとう途絶えてしまった。雲が出てきて日が隠れたのだろう、と思っていたのだが、食べ終えて外に出ると、店にいたのは三十分くらいだったろうか、なんとどこにも青空がなく雲に覆われているのだった。それでも、いつものコースで、農協の連売所に寄ってから由比ヶ浜に向かって歩く。遠くの砂浜にいる人を望遠で撮るが、望遠にしても小さくしか写らないくらいの遠くがいいのだ。だけど思ったよりグンっと望遠になるから、遠くの人が大きくなってしまう程度が予想以上になってしまう。水平線上に目ではほとんど見えない遠くに、ゆらゆらと陽炎のようにゆれながら、ヨットの帆が並んでいるのを撮る。ボートを漕いで釣りをしているらしい人も見つける。
 そんなこんなで由比ヶ浜で過ごしているうちに、また雲が切れてきた。それで気をよくして、もっともっと撮り続けた。一番上の写真はそれでも600mm相当までは行っていなかったと思う。400mmくらい。下の砂浜を歩く人は標準くらいの画角。ウインドサーフィンとボートは600mm。一番下はワイドの24mm。それで結局、自分としては一番下のワイドの写真が気に入っているのです。

 別の日の朝、あまりに早く起きてしまう。もう日は昇っている。明るくなるのは早くなった。烏がさかんに飛び交っている。鳴き交わしている。とうとう朝ドラのテーマソングの上に書いた音階がどっちが正しいのか、半音下げるのか下げないのか、確認するために楽譜を検索してみた。検索した楽譜によれば、前半の「いちにちが」の先の「ち」と後の「ち」は半音下がっている。それを知ってから、YOUTUBEで動画を見てみると、なぜ悩んでいたのか、当然これは半音下がってるじゃないか!と、聞こえるのだった。

 そのAKBの新しい曲「君はメロディー」って曲を聴いているとなんだか懐かしくなるんですね。ノイズだらけのラジオ、なんて歌詞もあるけれど、それより間奏や最後のところのエレピの音とかが70年代っぽいのではないか。最初の低めで抑揚の少ないメロディはフォーキーだし、そこからの展開は昭和歌謡というか昭和ポップっぽい。こういう「ぽい」というのを、雰囲気とか感覚ではなく音楽の具体的なコード進行とか編曲構成の理論からわかるようになれば、より楽しいのだろうな。このエレピの感じって松原みきの「真夜中のドア」とかだっけ?って思って聞きなおしてみたけど「真夜中のドア」は間奏はサックスだし、最後はギターのソロだった。このエレピの感じ・・・何の曲だったっけ?