2016年の湘南 80年代後半の湘南


22日の日曜日。9時からのEテレ日曜美術館で「大地が育てた写真 ブラジル移民 大原治雄」を見てから、どっかへ出掛ける家族の女性陣を自家用車で駅まで送り、その帰り道がスーパーフレスポの駐車場からはじまる大渋滞でイライラさせられ、途中から、こんな道の選択はほめられたものではないなぁと思いつつも、バス通りから住宅街の路地に折れてくねくねと走り帰宅した。
借りているマクロレンズをカメラにセットして、先週に引き続いて昔撮った、一枚一枚マウントされたポジ(スライド)の写真を接写する作業に入る。LEDライトによる単4電池6本駆動の薄いライトボックスの輝度ってだんだん低下するんだね。
そう言えば夜に自転車に乗るときに使っている単3電池二本で光るLEDライトも、電池を入れ換えたばかりのときが一番明るく光ることを思い出した。
なんとなくの感触として新しい光源もデジタル的に一かゼロかで、光るのなら同じように光り、何かの条件が未達になるとストンと消えてしまう、そんな気がしていた。そんなデジタル時代の新常識のようなことが、そうでないところまで及んで間違った理解をしてしまっている。テレビ番組を録画したDVD-Rも何年も減ると、ストンと映らなくなる、のかと思ったらそうではなくてきれいに圧縮記録された画像信号を再生できていたデータの一部が破綻して、画面のある領域なのか、動画を作るたくさんの連続した静止画のうちのいくつかの静止画なのか、見ていてもなにがどうなるのかはっきりわからないが、ブロック状のノイズが出たり、一瞬ぐちゃぐちゃの映像でフリーズしたようになるものの、感覚としては機械が「頑張って」再生努力を続けて(リカバリアルゴリズムの努力?)なんとか踏ん張ってくれることもある。先発投手が打ち込まれたあとにそのままやられてしまって降板するか、なんとかまた持ち直すか、のような違いがある。ちょっと違うかな。更に言えば、同じディスクで、さっきはとうとう諦めて再生継続不能だったのを一旦取り出して、昔ながらのおまじないのように息を吹きかけて眼鏡用クロスでディスクの表面を拭いてみると、さっきと違って、さっきは再生できていたところで詰まったり、反対に今度は難なく再生出来たりもする。
なんだ、十分にアナログ的だ。
アルゴリズムはある閾値をもって一かゼロか、右か左か、イエスかノーか、振り分けながら動くのだろうがそこに掛かる信号の方が、平均的には経時変化を起こし、即ち信号が徐々に劣化しつつも、しかし平均ではなく一回一回の値にはバラツキ要因を抱えていれば、最終的にはうまくいったり駄目だったりで、それがアナログ的に見える。なのでいちいち検証すると上に書いたような新常識が当てはまることは実際には少ないのかもしれない。
LEDライトはどうやら電流値を受けて明るさが決まるから、乾電池が昔ながらの「へたってくる」となればだんだん暗くなるのは、当たり前のことで、ずっと同じ明るさを保ったまま、あるときにストンと消えると勝手に思っていた私の勘違いが甚だしいってことだ。
先週、この古いスライド写真の接写をはじめたとき、ある感度と絞り値を決めたときの適正に写るシャッター速度はだいたい1/160秒だった。それが今日は1/80秒くらいから始まり、一時間半後には1/50秒ってとこになっていた。
露出状態がカメラの肩にある液晶に表示される。それで気が付く。あるいは同じシャッター速度で撮った写真をチェックするとだんだんと露出アンダーの駒が増えてくるから気が付いた。
何て言うLEDライトの特性のことは実はどうでもよくって、接写作業を一時間半程で切り上げ、今度はバスに乗って茅ヶ崎駅へ出る。午後1時半に合流した家族のTと二人で「熊や」に昼食を食べに行った。私は海丼を食べる。一年くらい前から、それまで1050円だったか1100円だったかの海丼は値上げされて1300円だったっけ?高くなった。しかしこれは私の感想で合っているかわからないが、内容も値上げとともに充実した気がする。海丼は海鮮丼の仲間なのだが、普通の海鮮丼より刺身が分厚い変わりに小さく切られている。鮪と、それも赤身と中とろが混ざってるかも、それに平目とか鱸の白身の魚も、ウニと蟹と、イクラもぱらぱらあったかな。ほかにもいくつかの種類が入っていると思う。思い出せないだけで。それらに既に味が付けてある。タレをかけ回してあるのかな。そこに細く縦に刻んだ細長いネギが全面的にどかんと載っている。木のスプーンが付いていきて、即ち、かき混ぜて食べることが推奨されている。
こう書いているとこれは海鮮丼よりあられ丼の部類かもしれないと思う。が、あられ丼では刻まれた刺身が小指の先程の細かさだとすると、熊やの海丼は親指の先くらいはある。書いていて思い出した。他にかずのこも入っている。烏賊もあったかな。
これに野菜のたくさんはいったスープ、小鉢が二品、漬物、フルーツが付いてくる。素晴らしい!
もう二十数年前、私の子供が幼稚園に通っていた頃、幼稚園から配られる保護者向け通信に、先生が自己紹介とともにおすすめの店を紹介しているコーナーがあった。そこにこの「熊や」が載っていた。紹介していたのは背の高い、眉毛が太めの凛々しい女の先生だったと思う。以来、年に数回から十数回、食べに行く。大抵は海丼で、日によっては黒板に書かれた本日の定食や丼やスペシャル定食を食べる。海丼はそうでもないが、ほとんどのメニューはすごい量だから気を付けた方がいい。食べログだと今日現在、熊や本店の点数は3.51。まあ、手厳しい感想を書く人もいらっしゃる。最近は値段も上がったので余計にコストパフォーマンスが問われる。しかし、私にとっては、海鮮系のランチにおいて、この刺身の鮮度でこのボリュームであることから比較するに、これを越えた満足度を得たことがないのである。海丼、イチオシ。
Tと別れて一人で電車に乗り、茅ヶ崎から七分か八分で藤沢。江ノ島鎌倉電鉄、通称江の電に乗り換えて、七里ヶ浜に行ってみた。七里ヶ浜の駐車場から浜で遊ぶ人達をたくさんスナップした。

例えば上の二枚の写真が今日撮った写真。一インチセンサーサイズの、ズーム比が4倍くらいのコンデジで撮っている。一番上が銀塩換算焦点距離24mm次が35mm。露出は多分だけど三分の一段くらいオーバーに設定してある。
下の二枚は今日接写したスライドからで、1980年代前半か中頃に同じく湘南地方にある、平塚市営プールと茅ヶ崎漁港の突堤で撮っている。ともに200mm、もしかしたら300mmの望遠レンズで撮っていて、この頃は露出をISO感度をずらして三分の一段くらいアンダーにしていた。例えばISO64のコダクロームを使っているときに、カメラの感度設定を80にしていた。
望遠+露出アンダーから、広角+露出オーバーに嗜好が変わっている。写真の中身も、当然それにしたがって、狙いが明確で主被写体がはっきりした写真から、その反対へと傾向が変化をしている。
これが歳を重ねたアマチュアカメラマンが、若い頃は肉ばかり食べていた人も歳を取ると魚に嗜好が移るように、一般的に辿る写真の嗜好の変化なのか。あるいは、決定的瞬間からニューカラーへと言うような写真の流行の変遷に知らず知らずに影響を受け続けた結果なのか、自分でもわからないのである。
ただ最近はときどき昔のような望遠スナップにも興味が戻ってきた、ような気もする。
ぱっと見、キャッチーなのは昔のような写真だろう。