新宿のエプサイトで開催中の山下恒夫写真展「日々Ⅲ」を見に行く。山下さんがカメラを向けるその先は、日々に起きる、いや、日々のなかで出会う、ささやかな小波のようなところだ。散歩に出て、やぁあんなところであんなことをやっているぞ、ふと立ち止まりポケットに手を入れて眺める。帰宅してからそんなことの一つ二つを覚えていれば、夕食の食卓で家族にちょっと話したりする。
今年初めて富士山に冠雪を見たよ。H川さんの車庫の鉄製のフェンスに防錆工事をやっていたよ。釣ったカレイをぶらさげて大急ぎで海から自転車を漕いでくる人に会ったよ。とんかつSにカキフライの張り紙が出たよ。(これはこれを書いている11/6に私が見た光景を「例」として書いた)
そんなひとつひとつの眺めた光景のうち、カメラを向ける「べきもの」と言う判断が、長年の撮影の繰り返しと自分の価値観とか嗜好とか、その日の気分とか体調とかでふるいにかけられ、そして撮るべきものとなれば、そっと、あまり接近せずに、シャッターを押していく。そういう集積のなかから選ばれた写真が並んでいる。山下さんが並べた写真から、山下さんがどこに「ふと立ち止まり、眺める」のかが見えてくる。そこに違和感がない。私もそこで立ち止まるのではないか、と思う。私はこんなに上手には撮れない。堂々と被写体に(写真を撮らせてほしいと)頼んだりもできない。だけど、どこを撮りたいかには共感を覚える。上手い下手を横に置けば、眼差しが同じなのだった。
http://www.epson.jp/katsuyou/photo/taiken/epsite/event/special/special_28.htm
神保町のSOBO STUDIOで五日と六日に「書肆神保町 アートと本のサロン」と言うイベントが開催され、そこに私も同人の一人になっているニセアカシア発行所が参加するので新宿から神保町に回る。とうとうニセアカシア7号が完成し、このイベントに合わせて販売も開始した。白い表紙のきれいな本になった。(私は「夕行電車」と言うタイトルで写真と文章を載せています。次の販売機会は未定ですが、またなにか決まれば告知します。)
新宿駅東南口近くの工事現場の(?)壁の落書きの中に、なにかの本かチラシから切り抜いたのだろうか、ロバート・キャパの写真が貼ってあるのを見つけた。上の写真です。誰が何の意図をもってここに貼ったのかな。それこそ立ち止まって眺めて、写真を撮って。でも意図はわからない。