五月の光


 伊豆フォトミュージアムでテリ・ワイフェンバックの写真展を見てきた。
 写真展では、この美術館のある「クレマチスの丘」の花や木や雲を撮った、この作家らしい風景写真「The May Sun」のあと、後半の部屋に回り込むと、『2003 年に最愛の母を亡くしたワイフェンバックが、パレスチナに咲く花を採集して作られた19 世紀の押し花帳『Pressed Flowers from the Holy Land』と出会ったのを機に制作されました。』と解説されている「The Politics of Flowers」と言う展示に変わる。解説では19世紀とあるが、被写体は20世紀のものもあるようだ。押し花帳そのものも展示されていた。押し花帳をモノクロームで接写した作品なのだが、プリントの紙に工夫でもあるのか、白がしっとりとして美しい。実際はそんなことはないのだが、プリントを指で押すことが出来たと仮定すると、少し深さがあって指が沈み込むように錯覚するような白だった。
 この写真家の写真をはじめて観たのは五年くらい前だったろうか、もっと前かもしれない、目黒あたりの住宅街の中の小さなギャラリーだったと思う。オールドレンズだと思う癖のあるボケ味を狭い深度でうまく使って、こんな新しさを感じる「撮り口」がまだ風景写真の分野でも出てくるものなのか、と思ったものの、最初のそのときはあまり好きにはならなかった。いまも特別好きってわけでもないけど、もはや見慣れた感じがあって、見る方(って私ですが・・・)も勝手なもんだな。

 帰路、芦ノ湖スカイラインの展望台から雲に隠れた富士山の裾野の稜線を写真に撮った。新緑の山々には様々な色の、大きく括る「緑」が重なってとても美しい。美しいが、車を停める場所がなくて写真が撮れない。撮れないから目に焼き付けようと思うが記憶の像はすぐに薄れてしまうのだった。