酒井俊のライブを聴く


 誰かが作った楽曲を、別の歌手や音楽家が気に入って取り上げて、それがネズミ算のように広がり多くの人の知るところとなると、それがスタンダードってことだろうか。満月の夕(ゆうべ)と言う曲をウィキで調べると
・日本の2つのロック・バンド、ソウル・フラワー・ユニオン中川敬ヒートウェイヴ山口洋が共作した楽曲である。
・1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の惨状、復興への厳しい現実、それらに向き合おうとする被災地の人々の姿が歌い込まれている(震災当日の夜、満月がのぼっていた)。
・後に、複数のアーティストによって、同曲のカバー・ヴァージョンが発表された。
とあり、以下、複数のアーティスト名がずらりと並んでいるが、その筆頭に酒井俊の名前があって
酒井俊 - 女性ジャズ・ボーカリストによるソウルフルなスタイル。1998/5/26にシングル『満月の夕べ』発売。2001/6/25にアルバム『四丁目の犬』に収録。
となっている。
 いまもその動画がYOUTUBEで見ることが出来るのかどうかわからないが、酒井俊東日本大震災のあとに、演奏設備も整わない状態の場所だったのだろうか、拡声器を使ってこの曲を、それこそうまいとかへたという次元ではなくて魂のすべてを込めて歌っている動画を見たことがある。いろんな音楽のネット動画を見てきたなかでも、音楽の成せることを信じることができる最高の動画の一つだった。

いま検索したらその動画はまだアップされていました。

 本日の午後は、酒井俊vo 田中信正pf 須川崇志celloによるライブが藤沢のル・クラシックであったので行ってきた。70人程度の小さい会場だったが満席。アンコールの前の前、酒井俊が急に事前に決めてあったセットリストをどうやら変更したらしい、そういうことになる動機が彼女の気持ちのどこから来たのかわからないが、この「満月の夕」を歌った。この曲の生まれにまつわる上記のような経緯を聞きかじりとはいえちょっとは知っていたからもあるのか、これは鳥肌が立つ歌唱と演奏でした。田中信正須川崇志も詩的で繊細で、ときに激しく強く、広がる音にとどまりがない感じ。暖かい雰囲気。ジャズって分類になってますが、いつも酒井俊のライブを聴くと思うのだがジャンルを超越して「音楽」なのです。今日もジャズのスタンダードになっている曲はあまり歌われず、ジョニ・ミッチェルのboth side nowとか、ショパンの別れの歌、千賀かほるの真夜中のギター、などなど、酒井俊自身が時間をかけて選曲し解釈し歌い方を作って来た(のだろう)彼女のスタンダードが歌われていた。

素晴らしいライブでした。

ところで写真は先日行った北海道の道央道で車窓から瞬間的に撮ったバス停留所の写真です。