夕方を歩く


 部屋の片づけをしている。根を詰めてしていたら肩が凝っている。三時半になったのを潮時にしてカメラをぶら下げて近所の散歩へ出る。上を新湘南バイパスが走っている茅ヶ崎小出川西側の畑を歩く。小出川にはオオバン、カモ、サギ。畑の中の舗装道路でテニスの練習をする親子。老夫婦の散歩。いちばん見かけるのは犬を連れた散歩の人。犬を飼っていると、散歩が運動になるのか。そしてその間に、いろんなことを考える時間になるのだろうか。
 外に出て、歩き始めると、ほどなく西の空の雲に日の光が遮られるから、急に寒くなる。すると景色が淋しくなる。

 西脇順三郎の「旅人かへらず」のような夕暮れだ。あの連作詩には「淋しい」と言う単語が何度も出てきた。風のない冬の午後の、細く穏やかな水の流れに、ただ浮かんでいるオオバンの白い嘴。その手前、川面に影を落としている裸の木。ゆるく下り坂になっている川べりの道で犬を連れた人通しが会釈をする、その先の遠くにはたくさんの鉄塔。資材置き場に置かれたオレンジ色のショベルカー。そういう「淋しい」で冬の夕暮れが出来ている。