白の中


 自宅のリフォーム工事が始まる前に、部屋中のあちらこちらにあった写真のプリントやネガをなるべく捨てないように段ボールにしまっていたが、それでもえいやっとばかりまとめて捨てたものもたくさんある。まあ十年も、それ以上も、一度も開いてないクリアファイルに仕舞われていた写真プリントを大事にとっておいても、また十年も二十年も開かないまま、持ち主である私がいなくなることを思えば、当然「断捨離」以前の「当然の整理」として捨てるべきものだろう。だけど、リフォーム前の整理という外的要因があって、たまたま開くことになったものだとは言え、十年以上見ていなかったプリントはなかなか面白い。写真は寝かせておくと面白いというのはもうこれは自明のことで、その通りなのです。
 これはそうは言っても捨ててしまったA3にプリントされていた、6×6で撮られた鳥取砂丘の写真の一部を、例によってマクロ撮影した写真です。なんか天国への階段というか天国への坂道を一歩一歩登っていく人のようだと、同じ写真の別のところを、同じように接写して作品として個展に展示した2005年だったか2006年だったかのころもそう思っていた。今回もそう思った。変わらない感想。
 ただ、十年以上前の個展のときには接写したところがここではなくて、赤いワンピースを着た女性がいたり、人数もこれより多くてもっとカラフルで楽し気なところもあった。