荒れる海の日


 神奈川県立美術館葉山館まで自家用車を運転して行ってみる。ブルーノ・ムナーリ展を観てからしばらく砂浜を散策する。帰路、海沿いの国道134号線は、そこそこの渋滞で、それは覚悟していた程ではないってことでもある。風強く、その風は塩水をしぶきにして車に吹き付けてくる。波は白く波頭を立てて沖から次々と押し寄せてくる。稲村ケ崎の県営駐車場に車を入れ、APS−Cサイズセンサーのカメラに70-300mmの望遠ズームレンズを取り付けて、その波の写真を撮る。すぐにレンズが塩水を含んだ湿った風のせいで曇る。
 しかし帰宅して写真を見ても、そのときに身体全体が感じていた。強い風、ゴオゴオと木が揺れる音、次々と入ってくる波の勢い、といったその場の状況がうまく写っていない。簡単に言えば、ちょっと波が立っているだけの普通の日、という感じだった。それが不満である。石内都絶唱横須賀物語のなかの手前にススキがある海の写真は、モノクロでハイコントラストで荒れていて、それは当時の写真の流行のようなことでもあったのだろうが、あの写真には強い海風がちゃんと写っている。ススキがあるせいなのか?
 それで、上の写真は下の写真をベースに、モノクロにしたり云々で少しでも、撮っていたときの感覚が再現できないものかとトライした結果です。
 強い海風は剣呑であるけれど、その風雲空を告げるな感じは、期待でわくわくするような気分の残滓も纏っているようで、嫌いではない。

 下の写真は七里ガ浜駐車場の信号のところで止められたときに撮りました。なんだろう?気になった写真です。