新宿


 新宿エルタワーの28階にあるニコンギャラリー1で開催中の藤岡亜弥写真展「Life Studies」を見に行く。藤岡亜弥という女流写真家は昨年でしたか広島で撮影した写真をまとめた「川は流れる」という写真集で木村伊兵衛賞を受賞していたと思います。私はこの方の最初の写真集「さよならを教えて」、ヨーロッパでのスナップを中心にして、男と女のあいだの短いメールのやりとりのような文章をところどころに置いた、洒落た感じの(ヨーロッパの粋な短編小説のような、とでも言いましょうか)写真集をもう十年くらいまえでしょうか?たまたまBOOKOFFで見つけて気に入って購入したことがあった。
 以来、なんとなく気になる写真家で、いすぞやはAKAAKA(写真集の出版社)のギャラリー(今もあるのかな?あまり聞かないですが)まで写真展を観に行ったりもしました。

 吉野英理香の写真集ネロリと似ているなんて書くと、なんて乱暴で分かってないんだ!と糾弾されそうな気もするが、似ていると思ってしまうのは、手元にある本やカードなどのページや写真を接写した、すなわち写真家の視点が近くの手元にあり、その被写体がすでに印刷された写真や文章であることで、写真家が過去や記憶へ想いを馳せている、そこから写真は過去との親和性が高くて、どうしてもノスタルジックな感情に寄り添う、という特質をうまく突いている気がするのだ。そう言う点でこの二人の写真が似ていると感じたのかもしれない。
 この藤岡亜弥写真展では、主にニューヨークカラーで撮られたの街角スナップで構成されているのだが、ところどころにモノクロの、それもフイルムの駒と駒のあいだの黒い枠線を中心において曖昧な写真を左右に散らし、さらに光で描いた煙のような「流れ」が重畳されている。もしかしたら偶然で光漏れして感光した痕跡かもしれないが。そのモノクロ写真も同様に「のっぴきならない出来事が積み重なって時間が今に至るまで流れてきた」ということを思わせると同時に、これは能天気な感想だが「それでも過去になったものは否応なく懐かしさを纏わざるをえず、そのなかで記憶は曖昧になっていく」という感じもする。こういう近い視点の接写された映像(文章)と、モノクロの写真が挟まれるリズム感のなかで、秀逸な街角スナップを見るのが気持ちが良いのだった。あとは撮影地がニューヨークっていう西欧である点で、私の世代だけかもしれないが、それだけでなんか異国情緒を感じて「洒落ている」「かっこいい」と感じる短絡回路があるのだ。いや、世代でくくるのは申し訳ないですね。私だけの弱点かもしれません。
 さらにこれらの写真が撮られた期間には911テロの頃が含まれているそうで、その点に関係することがこの展示に含まれていたのか、会場を四回五回と回ったが、表面だって読み取れなかった。

http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/201706/20181002_shinjuku1.html