鎌倉


 茅ヶ崎中央公園に何軒ものパンの店が仮設テントを並べてパンを販売するイベントが開かれていた。ちがぱん と言うらしい。
 ちょっと様子を見てみる。長い列のある店もあれば客のいない店もある。イベントのHPに載っている宣伝の上手い下手なのか、あるいはイチオシ商品の名前や特長が目に留まるかどうかなのか、あるいは口コミでパンの評判が広まっているかどうかなのか。きっと列の長いパン屋のパンも、誰もいないパンやのパンもそれぞれ美味しいのではないか。誰もいないパン屋に立ち寄り、目に留まったアンパンを一つ買う。それを懐に入れて、深緑の帽子を被りなおしてから、意識して背筋を伸ばし歩幅を広くして、子供たちが走り回り、紅葉のケヤキの下にシートを広げていろいろなパンを食べている家族連れやカップルのいる会場をあとにした。
 それから電車に乗って鎌倉へ行く。いつもの散歩コース。丸七商店街、農協レンバイ所、をのぞいてからまっすぐに海へ。
 パンは、鎌倉の由比ガ浜海岸のベンチに座って、コンビニで買ってきた冷たい綾鷹、ペットボトルのお茶を飲みながら食べた。買ったときによく商品名を見なかったが、珈琲が練り込んである餡だった。今日は鳶も飛んでいないからどうどうと食べる。
 由比ガ浜通の古書店に入り、外の均一台にあった詩集を買おうと思い手にして店内に入るが、詩集を近くに置いたまま、写真集の棚に並んでいる石元泰弘写真集などを捲っているうちに詩集のことを忘れてしまい買わないまま店を出てきてしまった。
 カフェ・ロンディーノはカウンター席にひと席の空き。その狭い席に滑り込むと、ポケットに入れたまま結局はどこでも読まなかった、由比ガ浜のベンチでも読まなかった本を少しだけ読み進む。それはデザイン思考についての本で、だんだん飛ばし読みになってしまっている本。

* この文章は11/18に書いていて、何か所か嘘、すなわち作り話であります。それを明かすと、帽子などは被っていなかった。アンパンは家で食べたんじゃなかったかな、よく覚えてないですが。あとは本当のこと。 *