なにを見るのか?なにを受け取るのか?

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 写真を前にして、なにをそこに見るのか?あるいは、そこからなにを受け取るのか?先日、某さんたちと大船の居酒屋で、刺身とかししゃもとかをつつきながら写真の話をした。

 写真を見ると言う行為は、その写真になにが写っているかを見極めて、富士山とか人とかケーキとか海とか、それで安心してしまって終わり、となることが多いが、本当はその写真を前にして自分がなにを感じたかということが写真を見ると言うことで、そういう鑑賞の仕方は、美術の授業などを通して、絵画や音楽についてはテキストとして知識が与えられ、同時に作品を見たり聞いたりしてその知識を体感して、絵画や音楽に分野や分類があることも教えられ、知らないとバツをつけられて点数を落として進学にまで影響してしまう教育システムになっているのに、絵画と同じ平面作品である(ことが多い)写真の見方は教えらないままで、だから何が写っているかがわかると安心してその写真を「団地と街灯と冬枯れたしょぼい木」の写真と定義し、ついで、ピントが合ってないからダメ、露出がおかしいからダメ、構図が美しくないからダメ、決定的瞬間でないからダメ、とどちらかと言うとダメ優先で選択が行われ、結果、どれもこれもありふれた「いい写真」が溢れている。それでいいのか!などと話す。くだらないですねえ。これ自体手あかにまみれた言いつくされてきたことで。この論を全面支持しているわけでもないし。でも写真仲間と飲み屋で話すときはこんなことを言って、同意を得て、息巻いている。

 最近このブログをHatena DiaryからHatena Blogに変えて、それを機に、2008年や2009年に書いたことを適当に選んで読んでみると、同じようなことを堂々巡りで考えては書き散らかしてあった。写真とはなにか?論を進めて系統立てていけばなにかに行きつけるのか?ただ水面に沸いてははじけて消える「泡」のように写真への考察が沸いては消えているだけで、あきれた。

 さて、私の使っているコンパクトデジカメは、だいぶお古になってきていて、五年くらい前のモデルかな、オートフォーカスコントラスト方式で、遅い。シャッタータイムラグは長い上にばらつく。マニュアルフォーカスにしたあとに、ピント位置を確認修正するというマニュアルにしてるのに余計なおせっかいをする機能がデフォルト設定されていて、もちろん気が付いてすぐにオフにしたが、そいつが間違ったおせっかいをするから購入当初はボケ写真を多発もする。車窓写真を連続的に何十枚、何百枚、撮っていると、ときどきとんでもないピンボケが発生している。この写真はとんでもない、までは行かないが。ずっと合っていて、急に一コマだけそうなる。電気信号的にはここがピントの合っている位置だと思っているわけで、アルゴルが稚拙です。これって、フイルムカメラ時代の安価なカメラによくあったゾーンフォーカスで遠距離は山マークに合わせ、一~二メートル先を撮るときは人のバストアップの絵のマークに合わせ、目の前を撮るときは花のマークにするとか、の方がよほど使いやすい。

 ところがですよ。このときどき急にピントをはずしてしまうというデジタル時代にあるまじきデジタル的なアルゴル不備による?アナログ的な雰囲気で発生する、あくまで雰囲気なのですが、失敗写真が面白いことがある、というこの天邪鬼な感想。

 絵画作品でスーパーリアリズムが究極ではないのだから、写真も絵画と同様、平面に現すことなのだから、写真が真を写しておらず、セザンヌのように時間軸を圧縮して光を取り込んだり(なんと最初のニエプスの写真のようだ)、ピカソキュビズムのように多視点で分解したり(もしかしてホックニーのコラージュかもしれない)、ジャクソン・ポロックのように偶然性に身を任せたり(・・・なにがそれに近いかな?)していてもいい、ということをこの機械の低レベルがもたらすいわゆる失敗写真が提示している・・・気がする。

 ジャケット写真で若いころはLPレコード、最近はCDを買ってしまうことがあった。数年前にアマゾンがどういう検索からの類推か知らないが、おすすめのところにクラウド・ナッシングと言うバンドのCDが出てくることがあり、そこにピントのぼけた灯台の写真があって、ジャケ写真買いをしたことがあった。音楽は刺々しい、激しい、ロックでちょっと好みではない・・わりにときどき聞くけれど。

 そんなわけでこの上の写真、最近私が撮ったなかでは気に入っていますね。しかし撮ったといってもこの特長であるボケはカメラがそうしたってことで。と言うことはこれは私の撮った写真なのか?カメラが偶然記録した写真なのか。よくわかりませんね。

  2月に入ってこのブログはボケ写真ばかりで、これは月単位の自分の気分の持ち様が写真のセレクトに現れているのかしら。

 

 

Attack on Memory [Analog]

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