Gallery Trax

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朝7時にいちど出発しようとして、しかし天気予報ではこのギャラリートラックスのある中央長坂インターのあたりは昼過ぎまでずっと雨予報で、辞めにしてして寝てしまった。8時半ころに起きたら、気分が変わっていて、ということなのかな、俄然やっぱり行こう!と思い、自家用車で出発。それが8:50頃でした。出発が遅れたし、圏央道から中央に入る八王子ジャンクションのところが渋滞するのではないか?と懸念していたが渋滞もなくすいすいと進む。ちょうど良く、ギャラリーの11時オープンに合わせるかのように10:55頃に到着した。開催中は若木信吾写真展「青い家」。会期があと一週間くらいだったから行ってよかったな。写真家の故郷である浜松の、観光地でもなんでもないだろう、暮らしのあるだけの土地で撮られたスナップのような写真が飾られている。タイトルの青い家は、鮮やかな青いペンキで塗られた家だが、では誰かアーティストとか建築家がなにかを表現すべく青い家を作ったわけではないのだと思われる。ただ暮らしのある土地で、そこの人が家を青く塗ったのだろう。鮮やかな青がいいと思ったんだよね。と、家の持ち主はおっしゃったかもしれない。私の住むマンションの近くにも、ちょっと普通に見かける家の色よりはずっと明るい青の家が一軒ある。そらいろのたね、だっけ?その絵本に出てくる青い(そらいろの)家のことをちょっと思い出したそうです、その家のご主人。もしかしたら浜松の青い家の持ち主も「その程度の」逸話があるかもしれない。数日前「リーチ先生」を読み終えました。原田マハの書いた、架空の?バーナード・リーチの弟子というか書生の亀之助を小説として据えて、その亀之助の目を通してバーナード・リーチやその周りの民藝運動の人たちを描いている。庶民の暮らしだけがあるそのあたりのありふれた町からどこかを切り取る写真家の目。目を通して写真家の頭によぎっている感情。それ(その写真行為)って風景の民藝運動のようではないか、などとふと思った。

ところでこのギャラリーはいい空間でした。奥の廊下にも絵や置物が飾られていて、そこを伝っていくと小さなカフェがあって、そこには二匹のおとなしい犬がいて。犬たちは寝転がって静かに庭を見ているが、客がやってくると俄然立ち上がって誰が来たのか見極めようとする。しかしおおむね一分もせずにまたごろりと横になりまどろみの時間に戻っていく。私と同じ時刻にやってきたおじさんが、珈琲を飲みながら、オーナーの女性に「別世界に来たみたいです」と言っている。

さて、私がこのギャラリーに到着したのはまさにオープンの時間だったのでたぶん今日の一番客だった。ギャラリーオーナーは昼食を予約した客のためにギャラリー内に大きなテーブルと椅子を並べていた。やってきた私を見て、清里のフォトアートミュージアムで開催しているロバート・フランク展を見てからここに来たのか?と聞いてきたので、そのフランクの展示はすでに始まったばかりのころに行って来て、今日はこのギャラリーが主目的です、と答えた。ここのところフランク展とここをセットで回ってくる若者が多いとのこと。それで少し話しているうちに、ロバート・フランクが先日亡くなったばかりで、それもあって客が増えているのかもしれないとおっしゃった。それで私は。フランクが亡くなったことを知らずにいたので(9/11に9/9に亡くなったというニュースが日本でも流れていたらしい)、このギャラリートラックスのオーナー女性から初めて聞いたので、すっかり驚いて一瞬言葉を失くしてしまった。まだ存命だった写真表現を大変革した巨星の一人だったという写真評論家的な書き方もできるが、そんなことより私自身がいままでずっと趣味とはいえ、写真を撮り、写真展を回り、写真集を集め、仲間と写真のことを話している、このことの底流には若いころ、二十代のころに何冊かの写真集を手にして衝撃を受けたことがエネルギーの源泉になっているに違いなく、そのうちの重要な一冊が「アメリカ人」だった。

帰りは大月から小仏トンネル抜けて八王子ジャンクションの数キロ手前まで渋滞に巻き込まれました。アクセルとブレーキをこまめに踏み変えながら、カーオーディオでザ・バンドの曲を流していた。いろんあアルバムを入れたHDDをアーティスト選択して全曲再生を選んだら、Aから順に曲が始まった。何曲か聞いていくなかには「アイ・シャル・ビー・リリースト」や「同じことさ」や「オールド・デキシー・ダウン」もあった。ロバート・フランクの頭にあった写真的なあれこれはどこに消えたのかな。アメリカの鱒釣りの墓場クリークの話のように、空高く釣り糸を投げると、フランクの写真的なあれこれが見えるようになればいいのに。

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