暗くなるのが早くなった

f:id:misaki-taku:20190929220018j:plain

目黒駅から権之助坂を下り、目黒川を渡ったすぐ先の右側ビルの二階にあるJAM PHOTO GALLERYまで公文健太郎写真展「川のある処」を観に行き、在廊していらっしゃった写真家ご本人と少しお話もできた。公文さんが被写体に向き合うその眼差しは、真摯で受動的で懐が深くて媚びがなくて礼儀正しい、そういう感じを受ける。それゆえにこの方の写真はいつも写真の王道に寄り添っていて力があると思う。

今回の展示はモノクロのフイルムカメラで撮った北上川の流れる周りの暮らし営みを見つめたシリーズ。入ってすぐ左の壁の一枚目。暗い(黒い)中に微妙な濃いグレーの諧調がきれいに残っていて、たいへんに美しいプリントだった。

若いころ、きれいなモノクロプリントとはこういうものか、とその美しさや精緻さに驚いたことが二度あった。最初はどこかのギャラリーで見たウィン・バロックの、有名な、草の上に裸の子供がうつ伏せで寝ているようなモノクロ写真で、これは大判カメラで撮られた写真でもあり、それまで見たこともないこれほどまでに精緻に解像した写真があるんだ!と初めて知った驚きだった。もう一つは、80年代前半に二子玉川高島屋?だったのか、そこに入っている額の店(特注の額などもやっていた)が、有名写真家のオリジナルプリントを販売する「試み」をはじめていて、そこで見せてもらった植田正治さんのモノクロプリントのグラデーションの美しさを見たときだった。80年代にオリジナルプリントを売ろうという試みはたぶん上手くいかなかったのではないかな。

帰りの東海道線、品川から川崎に向かい、川崎駅に到着する直前に電車は多摩川を渡る。このときにちょうど上の京急の鉄橋に赤い電車が走っていれば、もっとフォトジェニックな場面になったのかもしれないが、そんな偶然は訪れない。訪れない今日の私の見た光景がこれなのだからこれでいいのです。

急に日が暮れるのが早くなった気がしますね。小学生の高学年のころ、友達とキャッチボールをしていて、どこまで暗くなってもなんとかキャッチボールが続けられるものか!?遊びをしたことがあったが、私はキャッチボールの相手よりずっと早くボールが闇に溶け込んで見分けられなくなった。それは知らぬ間に、近視になっていたからなのです。暗い中から真っ白なボールが不意に現れて、それをなんとか捕球する。なんだか楽しかったです、そんな遊びも。