長い雨

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  小学6年のとき、私の3組の隣の2組で悪戯をした子供を、2組の担任の山田先生が叱っているのを廊下から笑いながら覗いていた3組のA君のことを、山田先生が激怒して頬をはたいた。A君は泣きながら帰宅し、実はA君のうしろで同じように2組を覗いていた何人かの仲間(その中の一人は私自身だったのだが)は、ほっとするとともに自分たちが「高見の見物」をして「嘲笑をして」いたことがいけないことだったと思った。

 中学2年のとき、二階か三階にあった教室から、下の道を歩いて行く初老の男性に、何人かの級友が大声で囃し立てた。おじさん、××!とか。このときの担任お小泉先生の叱り方はすさまじかった。加担した全員を横に並べて、往復で頬を張って怒った。誰かのことをその身体的特徴を取り上げて、自分が安全な(見つからない)位置から、囃し立てることの卑怯さを知らされた。

 いまの時代には教師の体罰はご法度だが、山田先生も小泉先生も、熱血な教師で生徒からも頼られていたものだ。ましてや父兄がそのことに文句を言うようなことはまったくなく、どんどん指導してほしい、というような時代だ。そして叱られる張本人になろうが、それを見ているだけであろうが、そこから正義を学ぶことは多かったのだろうな。

 SNSを使った誹謗中傷って、結局のところ山田先生や小泉先生が激怒した行為と同じなんだろうな。だからそんな安全な位置からの卑怯な発言には取り合わなくていいのではないか。とか書きながら、このブログだって私はハンドルネームで文章を書いて、いざとなったら逃げだせるよう匿名性を維持して書いているから同じ穴のムジナかもしれないな。

 長い雨が続く。ブラッドベリにずっと雨が降り続いている星をさまよう探検隊を描いた短編(中編)があったような。椎名誠のSF短編にもあったような。むかし読んだものだからとんだ勘違いかもしれないが。いずれ陰鬱な色合いだったと思う。