春一番

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春一番が吹いた。例年よりだいぶ早いらしい。そこで、テレワークの業後に、いつものウォーキングではなく、自家用車で相模湾が広く見渡せる平塚市と大磯町のあいだあたりにある丘陵のてっぺんの公園、通称「湘南平」まで登ってみる。暖かいのだと思っていたが、強い風が斜面に沿って噴き上げてきて、指も耳もあっというまにかじかんでしまった。湘南平から海を撮るときは、テレビ電波塔の、自由に登れる展望廊下のようなところから撮ることが多い。ほかにもレストランの入っている展望台もある。テレビ塔は東を、展望台は南と西を見るのに都合がよい。テレビ塔から東を見ると、結局その位置だけからしか見渡せない相模湾はいつでもこの写真のような感じにしか撮れない。あとはもっと望遠にしたりもっと広角にしたりだ。写真の上の方にかすんで見える町は相模湾をはさんで三浦半島の西海岸。写真の下の方に写っている海にそそぐ川は金目川もしくは花水川とも呼ばれる川だ。高校生まではこの写真に写っていないもう少し左側の街区に住んでいた。そしてこの金目川の河口付近でよく投げ釣りをした。あるいはカメラを持って行って夕焼け空を写真に撮ったりした。夕暮れの空を背景にしてシルエットになったサーファーを撮ったりもした。金目川には牛蛙が生息していてその鳴き声が聞こえたものだ。写っている橋より一本上流の橋はいまは車が通る片側一車線の市道になっているが、その頃は人専用の木橋だった。という風に「こうだった」「ああだった」と思い出していると、ほとんどの場所がなんらか変化しているのだと気づく。それなのに、こうして高いところから町を見ていると、そういうひとつひとつは結局のところどうでもよくて、実は大して変わっていない、もっと言ってしまえば、なにも変わっていない、とさえ思えたりもするのだった。スパイダースの「夕陽が泣いている」とか、安田南の歌う「赤とんぼ」とか、そんな曲のメロディが頭の中によみがえる。

なんだかおセンチになったので、良くないな。坂道を安全運転で下って行きましょう。するとおセンチがだんだん消えて行く。