花咲く

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休暇取得。自転車に乗って病院へ行く。自転車に乗るのは久しぶりだった。マンションの駐車場の一番奥に置いてあった自転車を引き出してきて、チェーンにオイルをさし、タイヤに空気を入れ、サドルやハンドルやフレームや泥除けや、すなわちパーツを拭く。私の自転車は、たぶん25年くらい前に、茅ケ崎市の「鉄砲通り」沿いにあったTさんのオリジナルカスタムメード自転車の店で造ってもらった。その店は移転していまも茅ケ崎市内某所で続いている。25年くらい前、その頃に、イタリアのミラノに出張する機会があり、休日にスイスのコモに案内してもらった。そのときにモノクロフイルムを入れたレンズシャッターカメラで撮った写真のなかに、スーツを着たすらっとした男が、細いタイヤの自転車を停めた脇に立って、新聞だったかな、なにかを読んでいる。そんなスナップ写真を撮った。その自転車がかっこいいなぁと思い、こういう自転車が欲しいもんだと思い、とうとう思いが募り、写真を持参してそのカスタムメード自転車の店に行ってみた。すると店のTさんが、その写真をとても気に入ってくれて、話が弾み、もちろん予算と相談しつつも、写真の自転車の雰囲気を持つシティ・サイクルを造ってくれた。ずっと乗っていて、一度だけタイヤを変えた。そういう自転車だから愛着があって、自転車は通勤に使ったりもしないし、いまや、年に十日も乗らないかもしれない。それでも、もう25年も経っているのに、錆びているけれど、古くなって買い替えようなど思わないし、ポンコツでどうしようもない不具合も起きない。オイルをさして漕ぎ出せば軽快にすいすいと走るのだ。皮のサドルが皮が固くなってしまっていて、お尻が少し痛くなるけれど。自転車を造ってもらった頃は、よく江の島まで片道10km弱かな自転車に乗って行った。

 昨年そんなことをしてみようと思ったが海沿いのサイクリング道路に砂が溜まっていて途中で断念した。サイクリング道路沿いにはところどころボードウォークがあるが、これもむかしはきれいに整備されていて、ちょっとアメリカ西海岸な感じがあったが、いまはだいぶぼろぼろだ。そもそも砂浜の砂が減ってしまったから、そんなことより砂浜を再生すべくトラックで砂というか土を持ってくることでなんとかしようと必死だ。海に流れ込む川の土手をみんなコンクリートの護岸にしてしまったから、海に砂や土が流れ込まないからだと聞いたことがある。だからボードウォークも廃止されてしまったところもあるようだ。西湘バイパスや海沿いの国道134号線沿いの七里ガ浜(鎌倉市)もなにか工事をやっている。二年前だったかの台風でずいぶん砂が削られて、道路まで削られてしまったところがあるのだろう。

 病院までは自転車だとせいぜい5分くらいで着いた。春の日差しが美しい。途中で真っ赤なシャクナゲの花を見ました。名前がわからない花弁が細長い感じのつつじのような花も見ました。写真の赤というか濃いピンクの花をつけている木はなんだろう。

自転車は住宅地の細い道を辿る。だんだんだんだん、住宅も新しく立替らえる。あるいは畑が埋められるアパートが建てられたり、駐車場になったりする。そういう何年も掛けての変化の結果、いつのまにか例えば二十年前とは光景を作る建物や畑やいろいろのうち、もう七割とか八割が変わっていくのだろう。ふと気が付くと、光景に愛着が沸きにくくなっているのは、私自身の愛着が持てる光景は消えて行ったそういうものが作っていた光景で、新しく置き換わった光景には愛着が沸かないのだろう。そんなことを思いながら自転車を漕いでいく。すると鳥の声が聞こえるし、こうして花々はいつもの春と同じく咲き誇る。鳥やら花やら・・・花鳥風月ってやつか・・・そういうのは変わらずに巡るから、街に置き去りにされると、そういうものを余計愛でたくなるのかもしれない。