歩くひと

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写真は2014年にフイルムカメラで撮った写真です。本牧ふ頭あたりだろうか。とある上映会が船の中に作られた劇場で行われ、その終了後に観客が三々五々、帰っていくところ。たぶんキヤノン6Lにスクリューマウントの35mmのレンズを付けていたのではないだろうか。

先日、入院しているときに病室に持ち込んだタブレット端末でNHK+で「歩くひと総集編パート3」(だったか2だか4だかわからないけど)を二回か三回観た。そんなこともあり知人から借りっぱなしになっている谷口ジロー「歩くひとPLUS」という本を本棚から取り出して捲ってみた。なんだか描かれた、歩くひとが歩いているありふれた町は、私の記憶のなかではありふれた町であって、その漫画の絵の中に実際にいまそれらの(漫画に描かれた元となっている)町に行っても、この絵を見るほど安心して町を見ることが出来ないかもしれない。そなわち典型として描かれた絵は安心が出来るものだ。絵の中で学校帰りのランドセルを背負った小学生たちが縦笛をみんなで吹きならしながら歩いている場面があった。縦笛を吹きながら下校したことが私にもあった。1960年代、怪しい映画の案内看板が電信柱に括り付けられている角、漢方の原料となるのだろう子供たちは「蛇屋」と呼んでいた店のショウウインドウ、いつもアメ車のムスタングが止まっている場所、タイヤ工場に沿って続いているコンクリートの壁、そういう横をピーポーと縦笛を吹いて歩いていた。吹いていたのは、音楽の教科書に載っていた曲ばかりではなかったんじゃないかな?例えばブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」の全部ではなくてもあるフレーズだけでも吹けたら、そこを吹いていたのではないかな。

最近も小学生は音楽で縦笛(リコーダー)を習うのだろうか?私の住むマンションのすぐ前のバス通りは近くの小学校への通学路になっている。朝8時台と夕方4時台になると、子供たちが歩いていく。自室の北側の窓から見て、朝は左へ、夕方は右へ。彼らは楽しそうにしゃべりながら通る。ときには歓声を上げて走ったりもする。雨の日でもとても楽しそうだ。雨をものともしないのは雨の通学路にあるものが、水たまりや濡れた自分の服や、傘から落ちる雨粒や、自動車が上げるしぶきが、みなそこになにかの楽しさの要因を持って見えるのだろう。