夏の西陽

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高校一年の頃、同じクラスのAくんから誘われて丹沢山地の塔ケ岳だったと思う、ヤビツ峠から登って、尾根を降りて別のなんとか言うところへ降りていく行程一日の登山をしたことがあった。たぶん初心者向けの登山とも言えないようなコースなんだろうな。トレッキングとかハイキングとかいろんな単語があるけどその違いはよくわからない。そして後にも先にも登山をしたことがないです。その一回のために登山靴やリュックを買ってもらった気もする。上りはきつかった。途中で何度も足を止めて休み、小さな子供含むほかの登山客に抜かれまくったもの。それでも達成感があった。下山したところにたしかジュースの自販機があって、そこで一本二本三本くらいか、ジュースを飲んだ。1972年か3年の話なのでもしかしたら別のもっと近い記憶とまじりあっているのかもしれないが、それでこの三本目を飲めばさすがにもう水分補給は十分だ、と言うときになって自販機の籤に当たってサービスのもう一本が出てきた。

ライムって夏の果物なのか?一年中ありますよね、レモンのように。でもライムって夏の感じがするのは何故なんだろう。上記の登山のはなしが50年くらい前だとするとこれは15年か20年くらい前かな、一体どこに何を食べに行ったのか、会社の仲間と四人か五人で鶴見あたりで何かを食べた。何だったのだろうか。その頃はB級グルメと言う言葉が流行り始めていて、文春文庫かなにかにその名を冠したシリーズの本が出ていたりした。それで会社の仲間と月に一度くらいの頻度でその本に載っているような店を選んでは食べに行っていた。いまで言えばBSの街中華で飲ろうの中華のところがもうちょっと多岐にわたる感じでときにはベトナム料理やインド料理や韓国料理になったりしていた。鶴見で食べたのは・・・沖縄料理だったのかしら?その肝心のメインイベントを忘れてしまったが、そのあとに駅近くにあった古い雑居ビルの二階にあったジャズの掛かるバーのような店に行った。階段の壁にコルトレーンかマイルスか、別のジャズミュージシャンか、忘れちゃったけれど誰かのポスターが貼ってあったような気がするが、こんなのもジャズ喫茶やジャズバーの定番だからそう思っているだけかもしれない。その店で誰のなんていう曲が流れていたのかも忘れてしまったので、まぁサマータイムとか処女航海ってことにしておこう。ハンコックの処女航海のジャケットの、あのシルエットになって映っているディンギーの?男のジャケ写と、収録されている処女航海やアイ・オブ・ハリケーンやドルフィン・ダンスは夏だなと思う。バーではひとつだけカクテルを飲んだと思うけれどそれが何だったかわからないがライムが添えてあったから、いちばんわかりやすいのはジン・ライムだろうか。その店は老夫婦がやっていたと思う。ほんの30分くらいいて店を出た。鶴見の駅まで歩いているときに自分の指先からライムの香りがするのに気が付いた。あぁ、ジン・ライムではなく、コロナ・ビールだったのかな・・・指先からライムが香るから、何度も指先を鼻に持ってきてその香りを嗅いだ。それも夏の思い出。

写真は茅ケ崎の南口の商店街を散歩しながら撮った西日の作る光景の写真です。

まぁあまり思い出話ばかりではなく、これからの夏を楽しめるといいな、と思います。

20代の頃に読んだ片岡義男の「彼のオートバイ、彼女の島」に、夏は単なる季節ではないひとつの心の状態だ、みたいなことが帯に書いてあったと思っていたが、いま本棚から捨てずにとってあったその本を見つけてみたら、帯には書いてなかった。だけどあとがきに著者自身が、この小説のテーマはそういうことだ、といったようなことを書いてあるのを見つけた。小説を読んで、読み終わって、そして私は、これからの夏をそんな風に定義して(されて)いろいろ夢想妄想したのだろうな。

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