ブランコのおじさん

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電車の車窓から一瞬にして後ろに遠ざかって行ってしまう風景をどんどん撮る。いちいち構図とか決定的瞬間とか考えてられないから瞬間の判断で、ここはフォトジェニック「寄り」だろうと決めて撮る。撮ってもいちいちなにが撮れたか確認なんかしていないでまた次の一瞬を待って景色を睨む。写っていた写真は大抵の場合撮っているときに思っていたような自分の求める写真にはなっていない。そして面白いのは画面のなかに撮ったときには気が付かなかった人が小さく写っていることがあるという点だ。たぶん屋外の気温は35℃近いのではないか。猛暑だ。その猛暑のなか木陰になっているわけでもない公園のブランコに帽子をかぶったおじさんが座っているのが写っていた。なんでおじさんだと判るんだろう?でもおじさんであっておばさんやお兄さんやお姉さんや子供ではないと思われる。背中が私はおじさんだと語っているのか。

さて、おじさんよ、なぜいまそこにいて、そこで何を思うのか?と写真を見たこの岬たくという別のおじさんの個体は思うのだ。そんなところにいたらいくら帽子を被っているとは言え熱中症になるよ、気を付けなくてはね、と思ったりする。そのくせ日本の真夏を歩いてその様子をスナップしたいものだ、などと思っていたりもする。

 

夏のある朝、住んでいるマンションの自宅から出て廊下を進み階段を降りると、虫がいる。もう絶命したアブラゼミやミンミンゼミが廊下に落ちている。緑色のカナブンがじっとしていたり、名前を知らない蛾が羽根を広げて階段の壁に止まっている。それらをよけて歩く。そういえば、昨晩は早くもコオロギの声も聴いた。