旅の本

f:id:misaki-taku:20210815151023j:plain

相変わらず数年前に撮った写真を使っています。これは2018年の8月の川崎駅前。写真に写っている人たちがマスクをしていない、というだけでなんと素晴らしく見えることでしょう!

8/14土曜日、日本列島には梅雨末期のような前線が停滞していて九州や山陰山陽ではここのところ聞くようになった気象の単語である「線状降水帯」が居座っていて、またもや土砂崩れや洪水の被害が出ているそうだ。長雨の小説・・・20代に読んだのだと思うレイ・ブラッドベリのどこかの異星で探検隊がずっと雨に降り続けられてだんだん疲労困憊していくような中編・・・あったかな?なんとなくそんな話があったように思うのだが。あるいは椎名誠にも長い雨の小説があったように思います。

(いま調べたらブラッドベリの短編集「ウは宇宙船のウ」に「長雨」という雨が降り続く金星を歩く探検隊の話があるようでした)

「ウは宇宙船のウ」には「初期の終わり」や「霧笛」など若いころ(二十歳のころ)ものすごく感動というか感心というか・・・・そういう短編がたくさん収められている。あの頃は名古屋市の四畳半の部屋に下宿していた。大家さんの居間を突っ切った先のドアを開けて廊下の左側にある部屋だった。その古い畳の部屋で、扇風機と団扇で涼み、蚊取り線香の煙が流れるなか、山下達郎の「夏の陽」をかけたりしつつ、ブローティガンブラッドベリをたくさん読んだものです。思い出すと、冷蔵庫もなかった。となりの村上くんの部屋には小さな冷蔵冷凍庫があったので、麦茶を凍らせてそれがちょっとづつ溶けたのを飲んだりしましたね。ブラッドベリブローティガンの一方で当時大流行していた五木寛之とかあるいは角川書店(文庫)がキャンペーンで売り出していた横溝正史推理小説とかもたくさん読んだ。角川文庫のキャッチコピーは「ポケットの中の角川文庫」というもので本を持って(ジーンズの尻ポケットに一冊ねじ込んで)旅に出よう、というようなことだったので時代として若い人の一人旅が「かっこいい」感じであることが背景にあった。たしかパイオニアのカーステレオかなにかも「ロンサム・カウボーイ」と言って一人旅を前提にしていたように思う。

今日は雨が降っていて、雨の日の思い出ってあるだろうか?といろいろ考えてみたが、あんまり思い出せないものです。ある用事のあった日が運悪く雨だったことは多々あったに違いないが、それが決定的になにか用事を阻害するとかあるいは予想しなかった偶然に雨のせいで巡り合ったとか、そんなことは滅多に起きず(一回も起きず?)だから雨だったかどうかは記憶から零れるんじゃないのか?さだまさしの「雨宿り」のようなことは発生しない。

上記の「一人旅」と書いて思い出したのは、たぶん18歳か19歳の頃、夏休みが始まるときに下宿していた名古屋市から実家の神奈川県平塚市に帰るときに東海道新幹線を使わず、中央西線中央東線で途中に霧ケ峰に寄って帰ったことがあったってことだ。中央西線は名古屋を深夜に発車する急行で早朝にどこだったのだろう?松本?につき、乗り換えて上諏訪だったか下諏訪だったかに行き、そこからバスで霧ケ峰に上がった。目的はニッコウキスゲのオレンジの花が一面に咲いている風景を見たかったということなのだが、その日が雨だった。しかもバスが高原に登るとそこはもう一面の霧が出ていて、五メートルか十メートルだったかはもう覚えていないけれど、高原を見渡すなんてことは全く出来なかった。遊歩道を少しだけ歩いて、数メートルの範囲に咲いている花をときどき見るだけだった。安価な雨合羽を持っていたような気がするが、そうだとするとどこで買ったのだろう。

霧ケ峰にはこのあとも数回は行っている。茅ケ崎に住むようになったあとも自家用車で写真を撮りに行ったことがあった。だけどニッコウキスゲが観光本や観光ウェブサイトに掲載された写真のようにたくさん咲いているところに出会ったことは結局はないと思う。それからやはり霧や雨の日に当たったこともあったのではないか。というのも上記の記憶は一人旅ではあるものの、ほかに自家用車に会社の仲間3人くらいで乗って行ったことがあるような気もするし、学生時代にもその後自動車メーカーに就職したSくんと二人で行ったことがあった気もしないでもないのだった。

一人旅のときだったと思うが霧ケ峰のバス停留所のあるレストハウスに戻って来て温かい蕎麦を食べました。きのこ蕎麦だったか。

旅行に行くのだから読書などせず観光をせえ!という意見もあるかもしれないが、私は旅行は読書機会にもしたいのだ。なので持っていく本を悩む。悩んだ上に一冊に厳選できなくて二冊から三冊持って行ってしまう。そしてたいていの旅ではそのうちの一冊のせいぜい百ページも読まずに帰ってくるのだ。でもそれでいいという気もする。

まったく覚えていないけれど、もしかしたらだよ、上記の霧ケ峰への旅行にブラッドベリを持っていったかもしれない。夜行急行も四人ボックス席の自由席車両で、電気も消えず、深夜の二時か三時までは眠れずに本を読んでいた。ブラッドベリの「霧笛」、夜行急行の眠れない夜に読むとか似合いますね。