秋も後半

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秋が9月から11月だとすると、もう秋はバトンを渡す姿勢になり冬が助走を始めているのだろう。電車の車窓から撮った夜景にカーヴを曲がる車の写った写真を眺めていたら、急にそんなことを「秋がもうすぐ終わるな」ということを思った。土曜日。東京都写真美術館で松江泰治「マキエタcc」、今年が最後となる「写真新世紀2021」を鑑賞。写真新世紀2021では優秀賞7作品から、昨日、作者による作品解説と審査員による質疑応答、その後、審査員の合議によってグランプリが決まっている。グランプリは25分の動画作品の「THE LAKE」。榛名湖で3か月、秋から冬が来て結氷しそれが溶けるまでの期間を撮影した作品だった。動画はモノクロで、それも柔らかいコントラストが優しい。冬のこととは言え、例えば「厳冬」の「厳」のようなことは感じない。季節が黙々と進んでいるという感じ。例えば「榛名湖の一冬のあいだに始まり終わった。偶然出会った旅の男と女の恋物語」といった映画があって、そこから物語に登場する人物たちが演じている場面をぜんぶ抜き出して捨てて、残った幕間の映像だけをつないだような感じ。すると、それはただなにもない映像をつなげたものではなく、物語の残光というの?残り香かな、それが抽象化されて観る人に委ねられて、でも濃厚に漂っている。繰り返し何度も観て、観ながらさまざまなことに思いを馳せたくなる、そういう映像だった。