今日も

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 コロナの波が大きくなると、やはり簡単に電車に乗って横浜や東京や鎌倉などに行くことに抵抗感が大きくなり、都内ではいくつか観たい展示やイベントもあるのだけれど、結局こうして「今日も」近くをうろうろしている。今朝の最低気温はここ湘南地方の茅ケ崎市でもマイナス3℃(Y!天気の数値)だった。もしかすると毎年一回くらいはそこまで低い日があったのか、あまり茅ケ崎市の最低気温に意識的ではないのでわからないが、滅多にない寒さなんじゃないかな

 快晴の時間は11時くらいまでという予報だったので9時過ぎにカメラを持って歩き始める。海は逆光でキラキラ光っている。サーファーにとって適切で綺麗な波が入っているようで多くのサーファーが海に入っていた。昨日、ずっと九州に住んでいて、もう15年以上会っていない同世代の友人とメールのやりとりをしていたら、1970年代に浅井慎平の写真集「WINDS風の絵葉書」を見て、そこに載っているような写真を撮ってみたいと思ったものだ、ということを友人が書いていて、なんだ、私もまったく同じだったな、と思ったので、本棚からその大きな写真集を引っ張り出してページを捲ってみた。写真集にはこういう逆光の海を撮った写真もあった。こんな風に標準レンズで水平線が入っているような写真ではなく、望遠レンズでもっと高い位置から撮っているようで、全面に海原が入っている。手前に半旗になっている星条旗が写っていた。昨晩そんな写真を見たばかりだったが、今日は単焦点標準レンズ一本だけで望遠レンズは持っていなかったので、真似っこ写真を撮ることが出来ないのだった。

 久々にその写真集を見て、最後近くに載っている「飛行場で風が吹いていて、一人の男が風に飛ばされたなにかが転がっていくのを拾おうと駐機している飛行機の手前を走っている」写真を見て驚いた。私はこの写真集ではこの写真がとくに好きな一枚だったのだが記憶の中では、飛行機は左に向いていて、そこに乗り込む四人か五人の乗客の列があり、その乗客の一人が帽子を飛ばされ、ころころ転がっていく帽子をあわてて列からはみ出て走って追いかけている、そういう写真だと記憶していたのだが。ところがそこまで鮮明に記憶していると思っていたその記憶が実際にはだいぶ捏造されていたらしい。まず飛行機の向きが右。飛ばされたのは帽子かどうか不明だが男はほぼ追い付いて拾おうとしている、その男を別の男が少し離れた後方から追いかけている。飛行機の向こう側に数人の人影があるが乗客かどうかまではわからない。あまりに記憶と違うので、もしかするともう一枚、記憶に近い写真があるのかと思って写真集を最初から捲ってみたが、そんな写真はなかった。可能性としては、浅井慎平ではない他の人の写真集にそういう写真があるのかな?ということも否定は出来ないものの・・・記憶って一部があやふやになったときに、ちゃんと覚えているほかの正しい記憶に収まりが良いようにそのあやふやを補填してあくまですべてがちゃんと覚えているようになるのかもしれない。そしてその一部の欠落が補填されることが何サイクルも回ると、いつのまにかほとんど事実と変わっているかもしれない。それでもそれが記憶というものの本質なんだろう。なんだか変異を繰り返すウイルスのようだ。

小さな飛行機 - 続々・ノボリゾウ日録 by 岬 たく (hatenablog.com)

本ブログの過去記事にもこの写真のことを書いていた。

 相模川の河口付近には600mmや800mmも?超望遠の大砲レンズを付けたカメラを三脚につけた人たちが大勢いて、空を悠々と飛んでいる一羽の大きな鳥に向けられ、それらのレンズがいっせいに同じ方向に振り回される。聞くと、ミサゴという鳥だそうだ。とびと違って、翼の裏側が白く見えた。

 すぐ下の写真は高速道路下のドッグラン。犬も飼い主と同じように走りださずに立ち尽くしているのがおかしかった。

 予報より曇りになるのは遅く、午後1時頃に帰宅したときも快晴だった。帰宅して一昨日新しい回がアップされたポッドキャスト番組「OVER THE SUN」を聴く。昨年の12月頃に教えてもらってから、いつのまにか随分たくさんの回を聴いてしまった。今回はヘミングウェイの「老人と海」の話が出てきた。中学生の頃、担任の小泉先生がクラスのみんなに勧めたので読んでみたら、純粋な?中学生にとってはもうほんとに身も心もその物語にすべてを奪われてしまうほど感動して、頭の中には感情移入した老人の気持ちばかりが占めていて、そうか、こう書いてみて思ったけれど「老人と海」が私の読書の感動というものを知る原体験だったのかもしれない。小学生の頃にもシャーロック・ホームズシリーズなど読んでいて、それはそれは恐ろしくなり夜中にトイレに行けなかったこともあったけれど、あの人生の理不尽さと、勇気の美しさを、同時に教えてくれるようなことは「老人と海」が初めての読書体験だったんじゃないかな。人に何かを伝えるのは難しい。

 

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