ラジオで聞いたオリンピック

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 先週茅ケ崎海岸の遊歩道で撮った写真です。

 冬のオリンピックやってますね。スーツ規定違反とか、スピードスケートのインとアウトの入れ替わりのところでの不運とか、フィギュアで飛ぶ場所にちょうど前の選手の開けた穴があったとか、なかなかに日本選手にツキがない感じ。偶然というのは必然的に起こるさまざまな出来事のなかで、ある確率で人が偶然と感じる出来事が起こる、という必然なのだと思いますが、一方でそうはいってもこれだけ重なると焦りが生じ、そうなると心の奥に小さくでも宿った焦りから、なんだか負の連鎖のようなことにつながるかもしれない。いざ負の連鎖の中に入ってしまうと気が付かないうちに、いろいろと縮こまってしまい、それに気付かずにいつもの通りでいると思い込むものだが、なにかの拍子に、あれ?ダメじゃんと思う。あるいはあとになり、あのとき、いつもと同じで平気だと思っていたけど、いま思うとヤバかったなぁと思ったりする。選手たち、悔いなきように。

 あれはいったいいつのことだろう。茶色の皮のカバーに入っている東芝トランジスタラジオ、選局つまみを回してもなかなか選局周波数の針が動かなかった。裏蓋を開けて観察すると、ダイアルと同軸にタコ糸が結ばれていて、選局つまみに巻き取られたり繰り出されたりして、その先の可変抵抗かなにかが滑って選局されるそういう機構で、そのタコ糸が緩んでいてスリップしている。なんとかタコ糸を結び直したりして使っていた。父からのおさがりで、父はもう少し大きなナショナル(いまの松下電器)のトランジスタラジオを新しく買ったのだった。東芝はAMと短波放送が受信できる、ナショナルはFMも受信できた。東芝トランジスタラジオにイヤホンをさして、眠るために布団に横になったあとも聴いていたことがあった。聴いていたのは、どこか地球の反対側で行われている冬のオリンピックの中継放送だった。たぶん1968年のグルノーブル大会だったんだろう。いま調べると「白い恋人たち」という記録映画、映画をどこかで見たのかどうか覚えていないが、この映画タイトルをいま読んだ瞬間にそのテーマソングのメロディーが頭に流れた。夜、布団に入ってラジオの放送を聞いている。それがなにの競技で日本選手が誰だったのか、なにも覚えていないけれど、AMラジオの不確かでときどき聞こえなくなるような受信状態のチープなラジオだった。それはまさに地球の反対側から辛うじて遠くの距離を渡って届いている(実際には東京で中継しているわけだからそんなわけないのだが)疲弊した伝書鳩のような電波だなと思った。現地は晴れた昼間だったかもしれないが、それなのに、聞こえてくるその競技は夜の暗い中で行われていると錯覚して場面を思い浮かべていた。

 今日は在宅勤務でまったく外に出なかった火曜日でした。