藤沢

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 一昨日のこのブログに14年前に藤沢で撮った、古い階段の上からこちらを覗き見ている黒猫の写真を載せた。そんなこともあって、久しぶりに藤沢の駅を真ん中にして、北側も南側も、二時間ほどだろうか、適当に歩く。適当とは言っても、それこそ14年前頃には頻繁に歩いていたので、辿る道筋は、はっきりと覚えてはいなくても、なんとなく、こっちの方に行くと、あの大通りに出るんだったよなぁ・・・という辿り方だった。居酒屋久昇は2017年に閉店していたんだ、今日になり久昇がないのに気が付いた。駅の周りに4軒ほどあった古本屋を順番に辿ることもしていたが、もう1軒を残してなくなっていた。喫茶ジュリアンとラーメンこぐまは健在で、ジュリアンは定休日らしかったが、こぐまには列が出来ていた。その先のモルゲン珈琲のあった場所は駐車場に。奥田センター飲食街の一番入り口側の左には古めかしい喫茶店があって、私が「レトロ喫茶のモーニング」を食べることに凝っていたころ(10-15年前?)にトーストセットを食べたことがあったのだが、ちょっとお洒落なイタ飯屋?になっていた。飲食街の奥の方にある天ぷらの店はまだ健在。遊行寺通りの和菓子松月(まつづき)で遊行饅頭を買ってみる(帰宅して食べたら美味しかった!)住宅街の中の細い路地を行く。すると黒猫はいなかったが、14年前には黒猫がいた階段のある古びた家屋は、いまも古びてそこにあった。昭和30年代までは特飲街だったと聞いたことのある一角に廃墟のように残っていた、木造のアーケードと両側に並ぶ二階のある飲み屋の長屋のあったあたりは囲われて工事が入っている。坂を上がる。するとこの公園があった。画面には写っていないが、私が立ってこの写真の方向を見ているその右側には、桜の木が3本、わずかに淡くピンクに染まっている花を下向きにたくさん付けていた。これも帰宅して調べると大寒桜のようだった。以前も書いたけれど、自分がカメラを向ける先は、新しいぴかぴかの街ではなく、街のなかには新しいものも古いものも混在している、そのうちの古くて、歳月のあいだにぴかぴかではなくなって、へこんだり錆びたり色があせたり・・・あるいは人の営みの年月が見え隠れする(古いポスターが貼ってあるのが見えたり、もう持ち主は大きくなって放置されている子供自転車があまざらしになっていたり)・・・そういう人や自然の移ろいのなかでそこだけが纏う時間の痕跡があるのだと思う。なので、言い換えると、すぐに取り壊されたり撤去されたりする確率がより高いのだろう。写真に写ってその写真を見るときに、その痕跡の残る古びた家や物には、撮ってから見るまでの時間がまた重なって流れているわけだが、それでも、痕跡をまとったものが写ったその写真が大事なのは、その後も時間が流れることを一瞬どこかに忘れることが出来るから、なのではないか。そうして例えば14年たってそこに行くと、写真のなかに閉じ込められて停まっていた「そこ」が更新される。更新される街はたいていはぴかぴかに更新されるわけなので、私は取り残されるような感情を覚える。