ピンホール

 自分にとっての新しい写真の撮り口の流行が過去にはあって、誰かの明確な影響である写真の撮り方や作り方を真似たこともあれば、これは自分だけの手法なんじゃないだろうか、と思ってみたりしてきた。90年代には新宿のギャラリーでホックニーのコラージュを見て、その手法でたくさん作ってみた。以降、二眼レフのカメラにネガカラーフイルムを入れて、基本は快晴の真っ昼間に少し郊外の畑や住宅のある場所のありふれた風景を撮ることに熱中した。コンデジが普及して、撮影結果がすぐに確認出来ることが面白くて小さな三脚にカメラを載せて単身赴任をしていた街の殺風景な安普請のアパートばかりが建ち並び、その真ん中を片側ニ車線の国道が横切っていく、そんな街区にも歩道の片隅にオシロイバナが咲いていたり、トタンの小屋の前に何故か立派なシュロの木があったり、工場の敷地の中にメタセコイヤが一本、そういう植物のある夜景を撮って歩いた。このときは職質も受けた。そのあとは、昼間なのにNDフィルターを何枚もつけて、スローシャッターの撮影をしてみたり。撮ってきた写真を映し出したモニターを微妙にデフォーカスで撮ってからいろいろ画像処理をして自分としては実風景というよりより記憶に近いような映像を作ってみたり。そうそう短期間だったけど自作したピンホールカメラでも撮ってみた。
こういう手法の、自分の中の流行のようなこと、最近はあんまりないけど、また新しい何かを生み出せないかな?逆光の海に浮かぶ黒いウェットスーツを着た大勢のサーファーを海と空が真っ白に飛ぶところまで露出オーバーにしてサーファーが空に浮いてるようにしてみたこともあったけど、なんだか気味悪い写真になったので一回きりでやってない。