雨男

 今朝はまだ晴れていて、東に向かう早朝の高速道路を走るのは眩しく、眼鏡の上に被るように付けるサングラスを掛けた。遠くのビル群は霞んでいる。でも午後からは雨が降り始める。明日の午前に搬入し、明日の午後からはじまり、日曜の夕方まで三日間展示をするイラストと写真の二人展はずっと雨模様になるらしい。こうなると、単なる偶然とはいえ、日常暮らしからちょっとはみ出たこういう「ハレ」の日に限って雨ばかり降るのだから、雨男だなあ・・・と思う。

 20代の頃に単車に乗ってツーリングをする、その日にばかり雨が降った。ある冬の日の伊豆へのツーリングでは、土曜が快晴で、宿に泊まり、翌日、伊豆のあれはどの辺だったのだろうか?伊豆高原よりもっと南(下)のどこかの温泉地だったろうか、当時住んでいた横浜市緑区の会社の寮に戻るまでの道中が雪交じりのみぞれまたは氷雨で、寮に着いたときには身体が冷え切っていて、寮の共同の大きな湯舟にすぐさま浸かったが、40℃のお湯に長いこと浸かっていてもずっと寒さが去らずお湯のなかで震えていた。それで何回か一緒にツーリングに行った仲間に「クラブ雨男」(倶楽部雨男だったかな)なんてグループ名を付けていた。

 あるいはある雨の日、真っ赤な躑躅の花の壁が両側に続いている小路を傘をさして歩いた、躑躅が途切れると小路は大きな池の上の木道に続いている。しばらく歩いてから振り返ると躑躅の赤が遠望できた。その池には大きな鯉がゆらりゆらりと泳いでいた。がらがらの小豆色の鈍行電車に乗ってその躑躅と鯉のいた街から繁華街に戻った。それ以外になにもない。その日のほかの記憶がない。ただ雨が降っていた日のことだ。誰かと一緒だった。これは夢のようだ。

 

 いよいよ、明日よりイラストと写真の二人展が始まります。