朝のスタバ

 写真は5年くらい前に、もっと前かな、中目黒駅あたりで撮った夜の写真だけど、以降は朝の風景です。

 朝の駅前のスターバックスコーヒー。壁沿いの長く低いベンチシート席に座り、ティーラテ・アールグレイを飲んでいる。眼の前に高めの椅子5個が囲んだ大テーブルがあり、白いパンツを履いた若い女性が座っている、その後ろ姿が見える。左足のスリップオンの黒い革靴は踵を脱いで、爪先に引っ掛けて、ときどき靴がゆらゆらと揺すられる。
 駅までは路線バスで出てきた。ほんの十分くらいの乗車時間。それでも、外を見ていると紫陽花の花が咲いているのが見えたり、列をなした小学生がTシャツ一枚の薄着からパーカーを羽織った厚着まで色んな色の色んな服装で歩いていくのが見える。彼らの列は全体には列だけれどその中のこの動きは少し自由気ままで走ったり止まったり、後ろ向きに歩いたりだ。
 途中のバス停から乗ってきた髪の白い、すっと背の高い男は、席につくなりスマホを操作する。私の席から男のスマホの画面が見えている。スポティファイで音楽を流しているらしく歌詞がスクロールして画面の上に動いている。だけど私から見える男の右耳にイヤホンは見当たらない。男は右足でリズムを取っている。聴いている音楽に合わせている。もちろん音が外に漏れているわけではない。だから左耳だけにイヤホンが付けられてるのだろうと推測する。確認しないままバスを降りてしまった。
 そういえば最近は誰かのイヤホンからの音漏れが気になったことがないな。でもそれは満員電車での通勤をしなくなったからかもしれない。誰かがイライラと貧乏ゆすりをしてるのを見たことも減った。リアルな対面の会議が減っただけなのか。
 スタバで流れる曲を知らない。誰かが作り、歌った、知らない曲。アコギを抑えるコードが変わるときに指が弦を滑るキュッという音がする。こんなのは楽譜にない、ノイズだけど、あっても良いノイズで、何十年前の演奏にも今の演奏でも、ときどき聞こえる。このノイズに名前があるのだろうか。デジタル技術で消音したりしなくて良いと思う。人の指がフレットを滑るのがわかってほっとする。そして流れてくる知らない歌が心地よいが、なんだかみんなが無害で平和な感じ。
 知ってる曲が流れ始めた。私が中学生の頃にヒットしていた、雨をみたかい、が流れる。これはクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルだっけ?CCRだね。
 あぁ、指がギターを滑るノイズのことからキース・ジャレットが即興演奏をしながら出す唸るような声のことを思い出してしまったな。あれは、嫌という人もいたし、良いという人もいたが、どっちでもいい感じだ。
 雨をみたかい、のあとは優しい囁くような歌い方の曲が続く。複雑なコードでふわふわと雲間を漂う天女が憂いてるような。天女だって憂いたり焦ったり嫌気がさしたりするんじゃないか。か細い声だけれど、ちょっとジョニ・ミッチェルみたいな曲。
 スタバの客の服は黒やグレーやベージュや紺色。私のきている紺よりは明るい青のカーディガンがなんとこの場で一番カラフルなのかな!?
 平日の朝の風景。