建物の影に一列になり踏切が開くのを待っている

 もう10年くらい前だろう。金曜日に大阪あたりに出張があって、そのまま一泊して土曜に京都へ寄ったのだったか・・・朝、二条城あたりの古くからやっている喫茶店でモーニングセットを食べてから、夏季特別公開の歴史的建造物で幕末の志士たちも使った料亭だった建物を見学したと思う。場所はJR山陰線の丹波口駅から歩いて行ったな・・・そこまで思い出してグーグルマップで記憶していた辺りを見たら島原大門があって、どうやら角屋を見学したのだった・・・角屋は高貴な人たちの大宴会場であった揚屋で、揚屋建築の遺構として公開されているそうだ。少し思い出してきた、その夏季特別公開ではいつもは公開していない場所も見せていたのだと思います。そこでこのブログの記事検索を「丹波口」で掛けてみたら、たしかに2014年の8月に大阪からの帰りに京都に寄っていた。大阪には上記の「出張」ではなくて、acruギャラリーで個展をやらせていただいたのだった。chest passと題した私の父が1960年代に撮った写真と私が1990年代に撮った写真を、2013年頃に似ているものを選択して並べるという作業をした作品だった。島原地区をさんざん歩いて、真夏のうだるような快晴の日、すなわちここ数日と同じような真夏の日だった。そのあと山陰線で京都駅に戻り、地下鉄で烏丸御池に行って、そのあたりの裏路地でランチをやっている居酒屋に適当に入り、おばんざいランチのようなのを食べたのだが、そのときにパンツが破ける事件が起きた。お尻のところが敗れたのではなく、左足だったかな太ももの内側が縫い目に沿って、黄色いリネンの記事がびりびりと音を立てて裂けたのだ。あせびしょびしょの太ももに生地が貼り付いたまま、居酒屋のほりごたつのような構造のカウンター席に座るときに。汗をかいた腿と生地が貼り付いてしまい、大きく姿勢を変えるときに生地が肌とのあいだで滑らず張り付いたまま一方向に引っ張られ耐え切れずに裂けた。汗をかいてなければそんなことにならないし、突っ張っているから気を付けようと生地をつまんで貼り付いている状態を剥がしてから座れば良かったのだが。それはもう太ももの付け根から膝のあたりまで縦に破けてしまったのだ。たまたまバンダナを持っていたので、それで太ももを一周結んで、裂けめがあまり見えない、開かない、ようにして、いちばん近いパンツを買える店は、いまはもうすっかり新しくなったけれど、新しくなる前の新風館が思い浮かんだ。ビームスに行ったけどなんだか高いのばかりで、二階だったかな、アウトドアブランドのコロンビアに行ったら、たしかセール中のくすんだグリーン系の、長いパンツだが膝辺りにチャックがあって半ズボンにも出来る構造で、生地が防水で通気性があり汚れをはじくというのが売り(だとあとで知った)のオムニシールドのものがあり、正直そのときはこういう緊急事態でなければこんなパンツは買わないのにしゃあない・・・と、気に入らないけどしょうがない、と買った。やぶれた汗まみれのパンツ(たしかジャーナル・スタンダードのものだった)は廃棄してもらった。

 そんなことがあったのだが、そのパンツをここ数年、よく履いているのですよ。なんか歩きやすいし、窮屈でなくゆったり履けるし、それこそ汗もあまりかかないし。じっくり選んだものではなく、なにか理由があって急がされて、慌てて買ったものがいつのまにかもっともよく使っているってことは、少し前にティンバッグ2のデイバックのことを書いたけれど、あれもその一つだけど、よくあるんですね。

 あまりに暑くて、車窓から見ていたら、一瞬通り過ぎる踏切で踏切が開くのを待っている人たちが、建物の影のなかに一列になっているのだった。写真は7/31です。