植物の塊

 金井美恵子の目白四部作を読み直してみようかな、と思って本棚をさがしたら「文章教室」と「タマや」と「小春日和」の三冊が並んであった。「道化師の恋」は持っていなかったのだろうか。「文章教室」最初の最初の方で女性同士の会話が続くところ、

「どうしたのよ、あんた、なんだかおかしいわよ」「そう?」「そうよ。変だわよ」「そうかしら?変かしら?」「変だわよ」「そんなことないわ」「そんなことあるわよ。ねえ、何があったの?」

この小説は1985年の1月刊行だから、この小説の舞台が何年を想定しているのかまでわからないけれど、ちょっとこの会話、1950年代60年代の小津映画などはみんなこの話し方をしていて(大抵、早口)、だけど1980年代もこうだった?あるいは、私は今2022年にはこんな話し方をしていないと思っているが、私が感じるだけで、いまも日本人の女性はこういう話し方、してますか?

「どうしたの?××(ここは名前)なんかおかしいよ」「えっ?そうかな?」「そうだよ、なんかちょっと変?」「えーっ、フツーだけどなぁ・・・変な感じする?」「うん、変」「そんなことないと思うけどなあ」「なんか怪しい・・・ねえ、なんかあったでしょ!」

じいさんが一生懸命、いまならこんな感じ?と書きましたが、これでもだいぶ違いますかね?

 あるいは

「どうしたの?××おかしくね?」「なにが?」「超変じゃん」「うそ!んなことない」「全然、変。やばくね」「やばくないよ・・・」「やばいよ、マジなんかあった?」

かな・・・

 

 写真は三日か四日前、深夜0時頃、一台も車が行き来しない、人っ子一人歩いている人がいない、両側に田畑や工場や資材置き場や駐車場のある殺風景地帯で車から撮った写真です。車などほとんど来ないのに律儀に動作し続ける信号が赤になって停まる。横を見たら、植物がぐちゃぐちゃと塊になっているように見える場所があった(画面の右)。夏の夜に植物が大きな塊になって、これはまだ道路の街灯があるけれど、なにも灯りがなければ夜空を背景に真っ黒いシルエットの塊になって、もしこれが街灯のない江戸時代やもっと前だったろすると、それは怖いだろうし、妖怪も跋扈しやすかったに違いない。などと思いました。だけど、赤信号が何分待っても青にならないまま、ふと気が付くと百鬼夜行が横断歩道を渡っていて、それがいつまでも途切れない・・・