80年代の田園調布駅

古い写真をときどき眺める。これは1980年代と思われる東京急行東横線田園調布駅の駅舎。この建物はいまも保存されているけれど、もう駅舎としては現役ではないのかな?会社の帰りにでも寄って確認すればいいのだが(そんなに遠くない)久しく行っていない。この写真を撮ったのは1980年代と思われる。色がだいぶ転んでいたからなんとなく修正してみたけど、こんな感じだったのかどうか?ポジフイルムで撮ってあった。時計が写っている午前8:30らしい。サラリーマンが駅舎に出入りしているし学生さんも写っているから、平日に思えるが、もしかすると土曜日かもしれない。平日だと仮定するとどうして私は平日にここにいたんだろう。この頃は同じ東横線都立大学に会社があり、茅ケ崎から、東海道線で横浜へ、横浜から東横線都立大学駅へ、電車を乗り継いで通っていた。途中下車して駅舎の写真を撮ったのかもしれない。だけどフレックスタイムだったろうか?8:30が始業時刻だったとすると、8:30に田園調布にいたら間に合わない。じゃあ、さぼったのかな?写真が下手ですね(笑)もっと下がって通行人の足元を切らないで欲しいし、駅舎はちゃんと画面の真ん中に置いてシンメトリーにしてほしいし、建物の左右に少しはスペースが欲しい。でもこれだけでもちゃんと「今じゃないな」「古い写真だな」と思えるのはどうしてだろうか。粒状感がフイルムそのもので、色の転び方もフイルムチックだからか。派手にゴーストが被っている。もしかするとこの銀色に赤帯があるバスの形がいちばん「今じゃない」のかもしれない。このバスがとても気になるな。そうか、この頃のバスはこんな形をしていたのか、こんなに古めかしかったのか。

 1970年代後半の学生時代は名古屋にいて下宿があった地下鉄星ヶ丘駅が最寄り駅の住宅街から、休日に名駅や栄といった繁華街に出るには、地下鉄東山線ならば星ヶ丘駅から20分くらいだったが、なぜかバスに乗って街を見ながら時間を掛けて行くのが好きだった。だいたい50分から1時間以上かかった。途中、街路樹の銀杏の葉がバスの窓をこする。大きな白い犬を連れた人が小走りに歩道を走っていく。少し文庫本を読み(当時は五木寛之が人気だった)、少しうたた寝をして。あの頃私が乗っていたバスも、だいたいこんな形のバスだったのだろうか。バスはたいてい一番後ろのベンチシートの進行方向に向かって左端に座っていた。記憶の中ではバスに乗っているのはいつも晴れだ。