サンタがやって来る

 葉山の神奈川県立美術館はすぐ目の前が相模湾で、海の向こうには箱根連山と富士山が遠望できる。この写真を撮ったのは2年前の12月。シーカヤックを漕ぐ人が、砂浜の方に向かって上がって来る。漕ぐ人はマスクをしている。赤いニット帽を被っている。そして赤いマフラーを巻いているようだ。多分にサンタクロースっぽい。

 子供に、サンタさんになにをお願いするの?と聞くと、大抵すぐに返事が来る(ような気がする)。うーん、ちょっと待って、明後日までに考えておくわ、なんていう子供はあまりいない(気がする)。たしか村上春樹山羊座うまれ)が、山羊座は誕生日とクリスマスと新年がひと月の範囲に起きるから、なんとなく損をしている、と書いていた(・・・かな?)。でもいま私、あ・・・私も山羊座なのですが、クリスマスでも誕生日でもいいんだけど、何が欲しい?と聞かれても、すぐには浮かばないんですよ。もちろん、私は自分で決めて、CDを買ったり写真集を買ったり、たまに服やバッグや靴を買ったりする。だけど、では例えばサンタクロースになにかお願いして、と言われると、すぐにはわからない。そういう自分で買うもののひとつをサンタクロースに担当してもらえばいい、というものではない。食べてなくなるものじゃつまらない、かといっていまより高画素のミラーレスカメラでは高すぎる(・・・サンタクロースに価格制限はないのだろうけれど、実際は「ある」わけで)。流行のものは流行後にすたれたら使えない。さぁどうする?

 子供の頃は、なんとなくゲームやら冒険風グッズが欲しかったな。双眼鏡、トランシーバー、方位磁石、星座早見表、天体望遠鏡、等々。それは「憧れ」があったんだろうな、冒険とか開拓とか挑戦とかに。だから実際には出来なくても冒険「ごっこ」をしたかったんだろう。

 この写真を撮った私の隣に子供がいたと仮定する。海からサンタクロースがシーカヤックを漕いでやって来る、というだけで夢のようだろう。憧れるだろう。サンタクロースに憧れるのか、シーカヤックに憧れるのかは、どっちの子供もいると思う。とにもかくにも、子供に憧れを与えるのだから、それだけでシーカヤックに乗った人は、十分にサンタクロース的だ、ともいえる。ちょっと楽観的なこじつけですかね(笑)