マン・レイと女性たち

 昨日の日曜日、神奈川県立美術館葉山に「マン・レイと女性たち」展を観に行ってきました。マン・レイと、あるとき恋人となりモデルとなり、ときにマネジメントをしたりサジェスチョンをしたりも?しては、関係性が変わったり、別れたり、また新たな誰かに結果としてバトンタッチするように、多くの女性がかかわっている、その時代時代の女性たちにスポットを当てて、その女性たちをモチーフにした写真や絵画や彫刻やオブジェを中心に、時代に沿って展示がされています。晩年の作品は時代時代に最先端であることと引き換えに持っている先鋭だけど脆い、コンセプチュアルだけどその分余白がないような感じから、なんか余白が増えていて親しみやすい感じがしました。とはいえ圧巻だったのは、リー・ミラーと別れたあとに、そのリー・ミラーの唇を描いたという「天文台の時刻に-恋人たち」でした。雲のある空を背景に空中に大きな柔らかそうな朱色の唇が浮かんでいる絵です。1990年代の後半にパリのモンパルナスにある墓地に行ったとき(フランスの墓地はある意味観光地であって入り口で著名人の墓地の地図を渡してくれた)そこにマン・レイの墓があったので地図を見ながら迷いながらも行き着いて写真を撮ったことがありました。木村伊兵衛賞受賞写真家の藤岡亜弥さんの「さよならを教えて」という初期の写真集にもマン・レイの墓を撮った写真があったと思います。墓にはマン・レイと最後に連れ添っていたジュリエットの写真が埋め込まれていて、ジュリエットが笑顔なのに、マン・レイはなんか無口な男がじっとこっちを睨んでいるという感じで、らしくて不謹慎にもちょっと笑ってしまいました。
 マン・レイと言えば写真技法的にはソラリゼーション、引き伸ばしの現像液に印画紙が浸っている段階で短時間光を当ててしまうことで像の境界部に黒い線が現れるような技法で有名です。私が高校生のころに、それがマン・レイが多用した手法などとは知らないまま、写真部の友人がソラリゼーションをやっているのを見て、見よう見真似でやったことがありました。砂浜に落ちていた貝殻とか小石を撮った写真をソラリゼーションで伸ばして高校の文化祭で飾った記憶があります。

 展示を見終わったあとに美術館のすぐ下の砂浜に行ってみました。曇天で、海の色が緑でした。