墨色の雲

 正月休みにたまたま通りがかってジャンクカメラを一台買った店。もう一度、古いジャンクカメラを安価に並べたワゴンを冷やかしに行こうと思い立ち、日暮れた町へ。しかしもう店にはワゴンがなく、店員に尋ねると、ワゴンが出るのは正月セールのときだけだと言う。あてが外れ、36枚撮りのカラーフイルムを二本買っただけで、いま来た商店街を戻ると、先ほどまで薄紅色だった雲は墨の色に変わっている。気温がふっと下がった。店の電飾に万年筆の絵を見つけて、少し見上げて写真を一枚撮ってみた。文房具の店と思ったが、帰宅したのちに調べると、革細工の店のようだった。通りすがりに電飾を撮っただけで、なんの店かもわからないまま通り過ぎていた。もっと立ち止まればいいものを。立ち止まっては、はてさて何か?と確かめればいいものを。電車が通り過ぎる。少し前に、もう日が暮れるのが少し遅くなった、春が近くなった、と思ったものだったが、ここ数日はその感じが起きない。また日暮れが早く、逆戻りしているように感じてしまう。明日も晴れる。明日になれば逆戻りの感じが消えるかもしれない。ネックウォーマーの位置を調整して首元から寒さが入るのを防ぐ。暖かいものがあるといい。