集まってご飯を食べる効能

 日が暮れた神保町あたりの裏路地の古いビル。黒いコートを着た女性が通り過ぎるのを待ってからシャッターを押すが、撮り過ぎたその後ろ姿は画面に留めておこう。

 この少し前、グーグルマップに「神保町×カレー」と入れて出てきた地下にある広い店へ入り、当然のようにカレーを頼もうとすると、カレーメニューがなくて、地ビールやおつまみ系のメニューが渡された。聞くとカレーはランチタイムだけだという。だけどちょっとお待ちください、と厨房まで聞きに言ってくれてカレーもこっそり出せます、と言われた。それで小ジョッキのビールにフライドポテトに牡蠣フライ三個と、最後に小ライスにした茄子カレーを食べようと決める。だけど、全メニューが一気に届いてしまった。フライドポテトは数人で分けるくらいの分量があった。それでもケチャップをちょちょっと付けてはポテトを食べる。ビールを飲む。牡蠣フライにタルタルソースはあまり付け過ぎないように。夜の早い時間でほとんで客がいない。ホールのような部屋の片隅の四人席で天井にゆっくりと吊り下げ方のファンが回り、壁際にセットされたこれは新しいのだろう大きな薄型のテレビにはモノクロのヨーロッパ映画が音を消して(あるいは小さく聞こえていたのか?)映っている。

 神保町の書店でふと手にしたのは、広告のキャッチコピーを集めた本。例えば・・・

   「逆に」を連呼しすぎて、なにが逆かわからなくなった。

わかる!私は、なるべく「逆に」と言わないように意識的でいます。どうしても言いそうになるとわざわざ「別の視点から見ると」とか「反対から言えば」とかぎくしゃくとだけどとにかく「逆に」は言わないぞと思ったりしている。

あるいは・・・

    何もないを楽しめる人は、人生を楽しめる人だ。

その心の余裕を持てたらと思うが、なにかと時間をあれこれ埋めてしまうものだ・・・

    嬉しい時も、悲しい時も、人は集まってご飯を食べる。

だから集まってご飯を食べられないこの3年間はとても辛かった人が多かっただろう。このコピーの先には「嬉しいことも悲しいことも、食べながら話してしまえば、すっきりするぞ」ということが控えているんだろうな。