ジャムとバター

 今日も午前のうちは雨が降っていた。昼下がりになって雲が切れて陽がさしてきた。昨日と同じように、近所の桜を見に行った。帰り道に近くの和菓子屋で梅大福をひとつ、買って帰ろうと思い立った。少しうきうきしたが、和菓子屋は閉まっていた。もう閉店時刻を過ぎたのか、定休日だったのかはわからない。この桜の木までの川沿いの道に梅が何本も植えられている。梅は花を落としてもすぐに葉を出さないから、いちど冬枯れた木に戻ったように見える。ところがよく目を凝らすと、花の落ちたところに小さな青梅が生まれている。小指のさきほどの大きさだった。その梅の木を見上げていたら、梅の向こうにある住宅の二階の窓辺に猫がいるのに気が付いた。猫は座って、窓ガラスを通してこちらを見ていた。

 パン屋の横を通り過ぎるときに、ちらりと店内を伺う。もし食パンがあったら買おうかと思う。だけど、大抵そうなのだが、このパン屋の食パンはほとんど予約で売り切れてしまうので、滅多に食パンを買うことが出来ないのだ。ならば予約をすれば良いのだが、たまたま通り掛かったときにふと思いついて店に入ることばかりだ。予め決めてお願いしておくのは、身軽じゃない。

 子供の頃、食パンをきつね色になるまでトースターで焼いて、ジャムとバターの両方を塗るのが好きだった。それをジャムバタと呼んでいた。ジャムを塗るか、バターを塗るか、どちらかひとつを選ぶのが正しく行儀よい食べ方で、二つを同じ面に、まずバターついでジャムと塗りたくるのは「お行儀悪い」ような感じがあったが、それでもそうやって食べていた。ちょっと悪戯の気分もあった。そういう食べ方が、実際には当たり前にやられている常識なのか、やはり邪道というかお行儀が悪いことなのかは、なんと!いまでもわからない。だけど例えばどこかのホテルの朝食でトーストを焼き、あの小さなパッケージのマーガリンといちごジャムが置かれていると、両方もらい、今でも両方を塗る。そしてマーガリンじゃなくてバターがいいのになぁと思う。
 もっときれいな構図で落ち着きの良い桜の花の写真も撮れていたけれども、このざわついた感じ、散らかっていて、落ち着きのない感じが、今日はいいと思った。