雨の中


 昨晩より雨が降り出し、今日は朝から夕方まで雨が降る。日が暮れるころに雨が上がり、雲の切れ間から一瞬、強い日がさした。昼、新京極のスーパーホテル前の京極食堂奈於へ。てんぷら定食。親父さんとしばらく話す。
 それから、雨の中で傘をさし、あるいはなるべくささずに済むように錦市場の通りなどを選んで歩く。そして下記の通り堀川五条の増田屋ビルへ行く。

 ところで、昨日一昨日の偶然のはなしの続きだが、私小説というのは一生懸命に物語を構築するより、まさに「事実は小説より奇なり」であって、実際に起きたこと(=偶然の集積)を再構築して、そこにそこはかとない、なんとも言えない味わい、奇をてらわないでかつありふれていて、でもそのありふれたことの因果関係を絶妙に構成する(取捨選択の妙)ことで出来ている、とすれば・・・これなんかも、非常にあやうくて、実際にはそんなひとことで括れないわけだが・・・そうするとそもそも分野分類すること自体に無理があって・・・。今日歩きながら思っていたのは、日本独特の分類と言われる私小説も、偶然を受け身で柔らかく受け止められるからこそ出来上がってきたものなのではないのか?などということなのだった。

 それで、昨日だか一昨日だかのブログに「庭」のことを引き合いにしたけど、吉田健一著「金沢」の舞台となる別荘の庭なんていうのは、非常に作為的に作った、というより自然に任せて作らせた、荒れ具合をコントロールしている庭で、これもなんかちょっと似た話のように思えるなあ、なんてことも考えた。



 壁の濡れ残った染みの形が、なんだかスティンキーか小悪魔か、そんな風にも見えて・・・。昨日からどうも壁に目が行っている。

 上の写真は増水した鴨川。昨日とは打って変わって・・・




 堀川五条交差点から五条通を東へ一つ目の信号の南側、五条通に面した場所に増田屋ビルという古いビルがあり、その三階に「うつわhaku」がある。数年前に、同じビルにある古書店に行った帰りに、気まぐれでhakuに立ち寄って、以降、ときどき顔を出すようになった。店主のヒロスエさんはご本人曰く「釉薬オタク」で、理論と実践でさまざまな色合いをコントロールすべく日々研究にいそしんでいるご様子。しかし、このブログの前日や前々日にも偶然について書いたばかりなのだが、釉薬の濡れ具合等の「偶然の」結果によっては、二度と再現できない色の器が出来上がるそうである。コントロールの追求とそれでもコントロールできない偶然のもたらす美、か・・・。結局なにごとも同じようなところにまれにみる美が生まれるってことなのか。
 掌にふわっと収まる丸さが、温かい、ヒロスエさんの器を、是非みなさんもどうぞ。