出窓の人形

 一昨日に続き、6月7月にフイルムで撮った写真が続きます。写真を撮るときに仔細にあたりを観察するわけでもなく、森山大道氏おっしゃるところだと路上と私の擦過の瞬間を記録しているということだけど、写真になって改めてみて、出窓に置かれた可愛い人形の仔細を見たり、この出窓の建物はアパートなのかな?戸建て?と考えたりします。

 街を歩いてみる。観光地でもなんでもなく、たまたまとある用事ができた初めていく町で、数十分かせいぜい一時間、歩くことが出来る。はじめてと言っても、同じ県内の、同じ都心への通勤圏内にある、駅の名前は知っている町。私鉄沿線の、普通しか停まらない駅のある町。

 初めての町を歩いた午後にはピアノを練習する音が聞こえてきたり、別の町の別の日の夕方にはカレーを作る匂いが漂ってきたり、そしてまた別の日の別の町の朝には、きのう子供たちが白墨で描いた絵をアスファルトに見つけたり。それから、こうして出窓に外を向いて置かれた可愛い人形を見つけたり。

 ここに人形を置いた人は、通行人に可愛い自慢の人形を見てほしかったのかな、それとも、この人形の持ち主が人形を擬人化して愛していて、ほら窓から外を見てごらん、という意志で人形に外を見せるために置いたのかもしれないか・・・

 桑原甲子男の写真に出窓?に置かれた製作途中の酔っ払いの?おじさんのマネキンを撮った写真がありましたっけ?あれ、あまりにマネキン人形がリアルで、本当のおじさんが日の差す出窓で居眠りしているのかと、そうずっと思っていました。

 出窓やショウウインドウに道行く人に見てもらうことを意識して置かれているもの、あるいはなにも置かれていないからそこに寝ている猫がいたり、見せるつもりではなくてもなんとなく年を経てそこに置かれていったもの、あるいはもう閉店した廃墟の出窓に転がっている、例えば・・・・指人形(これは撮ったことがあったので最初に浮かびました)、古い煙草ケース、古い新聞の野球記事の中に印刷されたヒーロー、窓という区切られた中にあるものって、スナップ写真を撮るときに、なぜかぐぐっと惹かれるものです。だから上記の桑原甲子男に限らず、多くの有名写真家が窓の向こうにあるものを撮った作品が浮かびます。