赤い夜


 11/23勤労感謝の日。午後、茅ヶ崎南口ちかくのギャラリー「街路樹」で毎年この季節に開催される古知屋恵子木版画展に行く。こっちぃ、風邪気味のつぶれた声。今年の新作は動きのある瞬間を切り取った、例年より動きのある作品に感じた。こういう感想って、本当にそうなのか、鑑賞者であるこっちの気持ちがたまたまそう反応する気分(?)にあったのか判らないけど。休日出勤する男性の様子を描いた新作が面白い。気持ちが安定して明るい・・・って、人間である限りそんなことはなくて、誰だって悩みを持って生きているのだけれど・・・でも気持ちが安定して明るい暮らしを送っていらっしゃるように、感じられる作品群。要するに幸せがあるのだった。

 次いで電車を乗り継いで鎌倉へ行ってみる。海蔵寺へ行ってみようと思い立ち、早足で歩いていく。しかし15時ころだったろうか、山に囲まれた海蔵寺にはすでに日が届いておらず、期待していた色づいた葉が光り輝くような場面には出会えない。浄光明寺⇒鶴岡八幡と歩くがだんだんとすごい人出に巻き込まれる。八幡宮の大銀杏はまだ紅葉しておらず緑色。人並みにしたがってのろのろとしか歩けない。やっとたどりついたcafeGateeは満席だったが入口ドア近くのmama!milkとidaのCDが置かれていたテーブルを使わせてもらい、遅い昼食にカレーを食べる。コーヒーも飲む。ちっちゃな男の子、コーヒーを飲んでいる私に向かって「ぼくは甘いのが好き。苦いのはきらいだ」と言う。そうだよ、大きくなると好きになるかもしれないよ。でもおじさんも実は甘いものが好きなんだよね。なんたってミスタードーナッツで言えば、エンジェル・クリームがいちばんなんだから。なんてことは言わないけど、思う。

 横須賀線で戸塚、東海道線で東京、山手線で秋葉原総武線で浅草橋。5時半に写真展開催中のギャラリーへ行く。少し前まで木村まいさんと須田先生がいらっしゃったと聞き、鎌倉の大渋滞の人波をうらむ。あと1時間早く来るはずだったのに!(でも実際にはいくらすごい人出であっても、1時間も遅れる理由ではないのだ)
 会場でsay-gさんと、ctさんと待ち合わせ。さらに田中寿さんがやってくる。ctさんが最近買ったリコーフレックスの使い方を伝授したり。say-gさんが、わたくし岬たくにと持ってきてくださった漫画あり。「いつものはなし/近藤聡乃」と藤子・F・不二雄異色短編集の「パラレル同窓会」「箱舟はいっぱい」など。「パラレル同窓会」に収録された「ある日」とか、「箱船はいっぱい」に収録された「どことなくなんとなく」などが岬の感覚にマッチするのではないか?とおっしゃる。ゆっくりと読ませていただきます。

 それから四人で近くの中華料理屋へ行く。男三人、ウルトラQウルトラマン、ウルトラ7などの話題ですごく盛り上がる。正確に書くと、私のこれらに対する知識に比べ田中さんとsay-gさんの知識量は数倍。怪獣の名前の由来やいちいちのストーリィなど詳しく覚えている。
 帰りの電車でボルヘスの伝奇集を読み始めるがすぐに眠ってしまい、数ページしか進まない。それでもいつもの感じがする。ボルヘスを読んでいると独特の「感じ」がする。なんか、深夜、街灯があってちゃんと明るいけれどほかに誰もいない道を一人歩いているときに、どこからか足音が聞こえてくるが、見回してもどこにも人影が見当たらない、といったようなすくむ感じ。理解できたように思いそのなかで安住している世界が実はまったく矮小であり、その周りに解明されないまま広大にある世界をつきつけられるような。上の赤い写真はちょい前に三軒茶屋で撮ったものだが、ちょっとそういう感じがあるかと思い載せました。
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以下、二枚は昨日の須田塾で「選ばれなかった」中からの二枚。

この写真の水色の部分は、なんなのだろう?よーく見ているがそこにあったとは思えない。結局DPE店で伸ばすときにフイルムのかけらが挟まったってことではないのか?その水色部分が変。


この写真は迷路のような路地を走りぬけた自転車・・・書かずとも、見ればわかるか・・・

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)